ネットで腰痛について情報収集している方であれば、「ストレスで腰痛になることがある」という情報を少なからず目にしたことがあるのではないでしょうか。

でも、そういわれてもピンとこなかったり、ストレス程度で何を大げさなと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、近年の腰痛研究では心の問題は切り離せないものになってきています。

ストレスって何?

ストレス(英: stress)とは、生活上のプレッシャーおよび、それを感じたときの感覚である。オックスフォード英語辞典では、苦痛や苦悩を意味する distress が短くなった単語とされる。

Wikipedia ストレス (生体)

一般的には、精神的な緊張感、重圧感、苦痛といった感覚をストレスと呼んでいます。ただ、医学的に腰痛とストレスの関係について話をする場合には、単にストレスというよりも、「心理社会的要因」という言葉がよく使われます。なぜそんな回りくどい言葉を使うのかというと、私達は次のような状況でストレスを感じやすいからです。

心理社会的要因(イエローフラッグ)の例

  • 家族・知人の死、自分や家族の怪我や病気
  • 結婚、離婚、夫婦別居
  • 就職、失業、転職
  • 社会的な責任の変化、生活状況の変化、労働条件の変化
  • 親戚トラブル、上司とのトラブル
  • 借金、法律違反など

精神的苦痛は身の回りにいる人との関係の中から起こりやすいので、社会的な立ち位置の変化・生活環境・職場環境などが自ずと含まれてきます。これをイエローフラッグ(黄色信号)と呼ぶこともあります。

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ストレスが生み出す腰痛

かつては骨や椎間板に関するものが多かった腰痛の研究ですが、近年は心理社会的要因が腰痛に関係しているという研究が増えています。腰痛は心理的な問題によって引き起こされたり悪化したりするというのです。

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、その心理社会的ストレスを受けた人々に重い腰痛が増えたという福島県立医科大学の研究があります。

イラク・アフガニスタンなどの戦場では、腰痛が急増するといいます。戦争に参加して腰痛を発症した兵士1410人を対象とした研究によると、戦闘で負傷したのは5%でしたが、原隊復帰率は13%にすぎませんでした。体の問題よりも心理社会的要因が関わっていると考えられます。

骨の異常が腰痛に関係しないのと対象的に、ストレスはそれ単体で腰痛を引き起こすことが知られるようになってきました。

Can discography cause long-term back symptoms in previously asymptomatic subjects?
Does Psychosocial Stress Affect the Onset of Low Back Pain? : An Observational Study before and after the Disaster in Fukushima
Back pain during war: an analysis of factors affecting outcome.

手術の結果を左右する心理社会的要因

椎間板の手術が予定されていた腰下肢痛患者84名を対象に、神経学的所見・下肢伸展挙上テスト・画像所見・心理テストの成績が手術の効果と関係するか調べた研究があります。その結果、手術の治療成績に関係していたのは心理テストだけでした。ストレスが低い人ほど治りやすかったのです。

腰部脊柱管狭窄症の手術でも、心理的な問題が大きい患者ほど手術の結果がよくないという研究があります。

手術というと医師の腕前が気になるところですが、それより大事なのは手術を受ける側の心の状態かもしれません。

Elective discectomy for herniation of a lumbar disc. Additional experience with an objective method.
精神医学的問題が腰部脊柱管狭窄の手術成績に与える影響

ストレスのチェック方法

このようにストレスと腰痛には関連性があり、一人の患者さんの腰痛が治りにくいかどうかを心理テストで予測できるかもしれないと注目が集まっています。病院でも心の問題をチェックしてから治療を始めるという流れが生まれつつあります。

では、自分がストレスが強いかどうか、チェックする方法を1つご紹介しておきます。ただし、このチェックは医師のチェックと組み合わせて行う方法ですので、これだけで腰痛の診断にはなりません。自己判断はせずに、専門家の診察、助言を大切にしてください。

・BS-POP
患者の自己評価用のものと,治療者側が患者を評価するものとが別にあり,
前者には抑うつ,イライラ感などに関する質問が10項目,
後者には診察における患者自身の問題などに関する8項目があり,それぞれに3段階で評価する.
医師用11点以上,もしくは医師用10点以上かつ患者用15点以上の場合には精神医学的関与が疑われる.
BS-POP
脊椎疾患の評価システム

腰痛は心理社会的要因まで含めて考える

この記事で取り上げた内容は、医療関係者でも知らない人は全く知らないくらい新しい話題です。しかし、腰痛を理解する上では外すことのできない要素でもあります。

腰痛は、腰の問題だけではなく、ストレスなどの心理的要因、その人を取り巻く社会環境まで含めて考える時代になっています。