腰痛でMRIのメリットはあるか
腰痛で病院に行くと、レントゲン(X線撮影)だけでなく、MRIも撮る場合があります。

レントゲンよりMRIの方が詳しく腰のことが分かるのではないかと期待するわけですが、レントゲン1000円前後に対して、MRIは5000円~と費用が大きくなります。

では、MRIにそれに見合うだけのメリットはあるのでしょうか?

MRIとレントゲンに差はない

これを調べた研究があります。

アメリカのワシントン州で380人の腰痛患者を集め、レントゲンで評価するグループと、MRIで評価するグループに分け、12ヶ月後に腰痛の状態を比べました。

その結果は、身体障害、疼痛、全般的な健康状態において、レントゲンとMRIに差はありませんでした。

医師や患者はMRIを好むが、レントゲンをMRIに変えても患者の利益が増えることはほとんどないかもしれず、手術が増えるために治療コストが増加する。

Rapid Magnetic Resonance Imaging vs Radiographs for Patients With Low Back Pain

手術が増えたのに腰痛の改善度に差がないとなると、必要のない手術が増えてしまったのではないかと気になるところです。

腰痛はとても患者数の多い症状です。それだけに、腰痛にかかる費用は、医療費全体を大きく圧迫する可能性があります。

一方で、MRIを使うと腰痛疾患とは別の病気が偶然見つかることがありますが、その確率は1.6%という報告があります。

論文では、腰痛で早期からMRIを使用することは、今の時点では勧めないとしています。

MRIで幸福感が下がる可能性

別の文献です。

急性腰痛・坐骨神経痛の患者246人を集めて、2つのグループに分けます。

片方はMRIの結果を医師と患者の双方に伝えずにケアを行ったグループ、もう片方はMRI結果を伝えた上でケアを行うグループです。

6週間の保存療法を行い改善度を比べたところ、2つのグループに差はありませんでした。

また、MRIの結果を伝えたグループでは、患者幸福度が低下しました。

画像所見で何か分かっても治療の結果は変わらず、幸福感が下がるだけになることから、MRIは腰痛患者に対して明確な価値があるとはいえない

Acute low back pain and radiculopathy: MR imaging findings and their prognostic role and effect on outcome.

MRIに限らず、画像診断は何らかの疾患の可能性があるときに行うもので、とりあえず撮っておけば安心というものではありません。

骨の変形や椎間板の異常など、腰痛とは関係のない画像所見はたくさんあります。それらの多くは自然な加齢現象で、痛みを起こすものではありません。

MRIによって何か見つかっても、腰痛の改善につながるとは限らないのです。

知る必要のないことを知って不安が増えてしまう。場合によっては、その不安から痛みが強くなるリスクも考えられます。

重い疾患の可能性がないのに早期から画像診断を行うことは、海外のガイドラインでは禁止されていることでもあります。

参考ページ⇒腰痛の原因と治し方(まとめ)