目次
東洋医学的鍼灸?
鍼灸には多くの流派があります。
大きく分けると東洋医学的鍼灸と現代医学的鍼灸です。
しかし、そもそも鍼灸自体が東洋医学の一つですから、鍼灸を東洋医学とそれ以外に分けるという分類は、かえって複雑にしてしまっているだけなのかもしれません。
現代医学的鍼灸であっても、経穴(ツボ)に鍼灸をすることは同じですから、あとは東洋医学の色が濃いか薄いかという違いになります。
当院が「東洋医学に基づいた鍼灸」を掲げているのは、他院よりもその色が濃いということです。
気の巡り
では、東洋医学的鍼灸とはどういうものなのか、その考え方について書いていきます。
その最大の特徴は、気という概念です。
概念というと小難しく感じられるかもしれませんが、実はものすごくシンプルです。
気とはエネルギーのことで、生命活動を支えています。
エネルギーが全身をめぐっているので、私たちは生きている。
こう書くと当たり前の話ですが、これがとても大切です。
なぜなら、気の循環に問題が起きるということは、健康に何かしらの問題が生じることだからです。
上の図を見てください。
○ですが、これを仮に人だとしましょう。
体の中を赤い矢印のように気が巡っている。
シンプルですね。
ところが、こちらでは気の巡りに問題が起きています。
流れの強いところと弱いところができてしまっています。
こうなると、生命活動にも活発なところと弱っているところが出てきてしまい、何かしらの「症状」を自覚するようになります。
例えば、胃腸の消化が悪くなったり、肩の筋肉がこわばっていたり、気のバランスの乱れから症状が現れます。
こうした気のアンバランスを東洋医学では虚実という言葉で表現します。
気の弱いところは虚、強いところは実です。
東洋医学における治療とは、虚や実をなくしてバランスを整えることです。
経絡(けいらく)
体を気が巡っている。では、どのように巡っているのでしょう。
海に海流があるように、都市に交通網があるように、人体にも気の循環ルートが存在しています。
それを経絡(けいらく)といいます。
経絡の中でも重要なメインルートは十二経脈(じゅうにけいみゃく)と呼ばれ、12本が輪のように繋がって大きな流れを作ります。
十二経の図を全て掲載します。(画像をクリックすると拡大、右下のCLOSEで戻ります。)
このようなルートを通って気は巡っています。
健康であれば、どのルートも流れは一定でよどみがありません。
健康を損なったときは、どこかに気の虚実が現れます。
例えば、腰痛のときに少陰腎経が虚していたり、肩こりのときに少陽胆経が実していたりするわけです。
こうしたバラつきを整えることで、体は健康に戻っていきます。
経絡のルート上には経穴(ツボ)が存在します。
ツボを刺激することで、気の流れを調節することができます。
病(やまい)の標と本
ここでは健康を損なった状態を病(やまい)と呼びます。
病のときには何かしらの症状が出てきます。
東洋医学では目に見える症状を標、その原因を本と呼びます。
病を一本の木だと考えたとき、症状の原因である「本」は木の幹にあたります。
症状そのものである「標」は枝葉にあたります。
枝葉をいくら刈り取っても、木の幹がそのままだとやがて新しい枝葉が伸びてきます。
具合が悪いとき、つい症状に注目してしまいますが、大切なのはそれを生み出している大本は何か?という視点です。
四診法
四診とは、鍼灸における診察法のことです。
望聞問切の4つがあります。
- 望診 顔色など、見て分かる情報
- 聞診 声の調子や音色、体臭など
- 問診 体調や経過などを質問する
- 切診 切=触れるの意味 脈診や腹診などの触診の総称
これらを駆使して、病の原因を探して治療を行ないます。
脈診
四診法のなかの切診、その代表格が脈診です。
手首の動脈の打ち方を指で感じ取り、体の状態を知ろうとするものです。
分かりやすくするために、少し極端な例を挙げてみましょう。
例えば、イスに座って静かにしているときをイメージしてみて下さい。
こういう時に脈診をすると、静かで落ち着いた、おだやかな脈を打っています。
これが全力でマラソンを走った直後だとどうでしょう。
脈拍は早くなり、激しく強く太く感じられるはずです。
これは心臓に負担がかかっていることを意味しています。
では、静かにイスに座っているのに、マラソンを走った直後のような激しい脈を打っている人がいたらどうでしょうか。
その人は健康でしょうか?
いいえ、何らかの病的な理由で、心臓に負担がかかっている可能性が高くなります。
このように、健康な人の脈と、そうでない脈には違いがあります。
この違いを指先で読み取るのが脈診です。
考えかたは色々ありますが、普段当院で行っている方法だと、脈を少なくとも60通り以上に分けて判断します。
それによって、治療に使う経穴(ツボ)も変わってきます。
補法と瀉法
四診によって体の状態が把握できたら治療を行ないます。
虚している経絡には補法(ほほう)、実している経絡には瀉法(しゃほう)を行ない、バランスのとれた状態に持っていきます。
詳しくは触れませんが、刺鍼テクニックによって刺激の意味合いが大きく変わります。
補法 虚を補う。浅く軽い刺激によって、生命活動を活発にする。
瀉法 実を取り去る。こりを取り、過剰な生命活動を穏やかにする。
難経六十九難本治法
「虚すれば其の母を補い、実すれば其の子を瀉す。」
これは難経という医学書に出てくる言葉で、五行論の母子関係(相生関係)を使った治療原則です。
五行論は、この世のあらゆるものを5つの属性に分けて考えます。
人の内臓でいうと、肝は木・心は火・脾は土・肺は金・腎は水になります。
五行には、それぞれを養う関係(相生関係)があります。
木は燃えて火となり、火が燃えた後には土が残り、土の中から金が掘り起こされ、金には水滴がつき、水は木を養う。
この関係を治療に応用した考え方です。
例えば、診察の結果、肝が虚していたとします。
肝は五行では木にあたります。
木は水によって養われるので、肝が虚したときは水の経穴=曲泉穴を使うことで補うことができると考えます。
肝虚 曲泉(肝経の合水穴)
肝実 行間(肝経の栄火穴)
心虚 少衝(心経の井木穴)
心実 神門(心経の兪土穴)
脾虚 大都(脾経の栄火穴)
脾実 商丘(脾経の経金穴)
肺虚 太淵(肺経の兪土穴)
肺実 尺沢(肺経の合水穴)
腎虚 復溜(腎経の経金穴)
腎実 湧泉(腎経の井木穴)
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