ツボってどこですか?

鍼灸治療するとき、私たち鍼灸師はツボを使います。とはいっても、ツボって普通の人が目で見て分かるものではありません。

ツボ、正確には経穴(けいけつ)ですが、その位置を示したものに経絡経穴図があります。鍼灸師は学生時代、必ずこれを丸覚えすることになります。ざっくりいって、全身ツボだらけです。

例えば、手のツボを見ただけでもこの有様です。(※書物によって場所は変わります)

手のツボ

そして、必死になってツボを覚えたら、次に衝撃の事実を知らされます。

「ツボの位置を覚えただけでは治療できません」

ええーっ

でも、実際にそうなのです。

ツボって、図を見れば場所が分かると思いがちですが、それってあくまで「だいたいこのへん」という座標図でしかありません。図には黒丸の点で示されていますが、実際の手には点なんてついていません。そこに何かあるとしても、普通に皮ふがあったり、骨のでっぱりがあったりするだけです。

で、ツボってどこですか?

答えは、「変化の出ているポイント」または「変化を起こせるポイント」です。

固いか、凹んでいる場所

変化の出ているポイントとは、固くなっているか、凹んでいるポイントのことです。

固くなるというのは筋肉の話です。筋肉がこる・拘縮する・硬結ができる等いろいろな言い方がありますが、筋肉の中で一部分だけ、固くしこりのようなものが出来ることがあります。そこを指などで押さえると痛みが出ます(圧痛)。

もしくは、皮ふの中でどこか一部分だけ、周囲に比べて張りがなかったり、ぶよぶよしていたり、ペコンと凹んでいることがあります。このように、周囲と比べて正常ではないポイントをツボといいます。「反応のあるツボ」と表現することもあります。

ツボの反応は、経絡経穴図の場所に必ず出るとは限りませんし、全てのツボに反応が出るわけでもありません。その時々の体調に合わせて、反応の出るツボは変わりますし、その位置も微妙に変わるものです。

体のどこかに問題があるとき、皮ふや筋肉の変化という形で知ることができる。これがツボの一つの形になります。

こうした変化の出やすいツボのことを、診断点と呼ぶことがあります。単純にいえば、胃のツボが固いから胃の調子が悪いのかな、というように考えることができます。

本当は細かいことを言い出すともっと色々あるのですが、このへんにしておきます。

体の異常を改善できる場所

ツボは、押さえるだけでも体に変化が起こることが多々あります。体の状態を改善できる場所もツボになります。わかりやすく、治療点と呼ぶこともあります。

とある患者さんが「魔法のツボ」と呼んでおられるツボがありますが、足にあるのに肩こりに効くという面白いツボです。名前を陽陵泉(ようりょうせん)といいます。

教科書的に場所を書くと、「下腿外側にあり、腓骨頭の前下際、陥凹部」となります。図でいうことここです。

足のツボ

ここを、ある条件下で鍼治療すると、肩こりが一気に楽になることがあります。条件とは、座って、膝が90度くらいに曲がっていて、カカトもしっかり地面に接地している体勢です。特に、首を横に傾けたときに、肩のスジが伸ばされて痛むような場合に使います。

陽陵泉は指で押さえただけでも肩こりが楽になることがありますが、指を離すと元に戻ってしまいます。指圧だけでこのツボを緩めるのは難しいので、グリグリやって青あざを作ったりしないようにご注意ください。私は鍼(はり)を使います。

ツボの探し方

慣れないうちは誰でもそうですが、指導を受けながらとにかく図の場所を探して、触れてみて、押さえてみて、、ということをやります。どうしても訓練が必要になります。やっているうちに、ツボがどういうものなのか分かるようになり、強く押さえなくても圧痛があるかどうか分かるようになります。

ツボの場所は、図にはここだと示されていても、人によって場所がズレていたり、日によって反応が出たり消えたりします。人は生きていますから、機械のスイッチのようにはいきません。

私の場合は、脈診を使って、「今日はここだな」という判断をしています。脈診の中身についてはブログで書くには専門的になりすぎるので、専門書に譲ります。

引用図書:経穴マップ 医歯薬出版株式会社

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