今回は、2019年5月に公開された文献より。
Synthesizing the Strength of the Evidence of Complementary and Integrative Health Therapies for Pain

慢性痛はアメリカの成人、約1億人に影響を及ぼしています。

痛みへの対処法として、オピオイド鎮痛薬(医療用麻薬)が注目されていますが、薬物の過剰摂取による死亡、依存症による入院が増えています。

そんな中、オピオイドを減らし、薬を使わない治療に関心が高まっています。

そこで、痛みに対する鍼治療、マッサージ、マインドフルネス、太極拳のエビデンス(科学的根拠)が調査されました。

今回調べられた4療法の中では、鍼治療は最も評価されており、唯一、痛みに対して明確に肯定的なエビデンスを示していました。

鍼治療のエビデンス
・肯定的な証拠
頭痛・慢性痛

・有効な可能性がある
変形性関節症、足関節捻挫、陣痛、前立腺炎、かかと痛、顎関節症、妊娠痛、慢性膝痛、子宮内膜症

・不明確、または混合した証拠
片頭痛、月経困難症、全身痛、癌性疼痛、背部痛、頸部痛、手術鎮痛、術後痛、線維筋痛症、肩痛、関節リウマチ、アロマターゼ阻害剤誘発性関節痛、慢性末梢神経障害性疼痛、外側上顆痛。

・証拠なし
手根管症候群

鍼灸のエビデンスは確立されつつある

代替医療解剖(改題前:代替医療のトリック)が出版された10年前は、コクランレビューを根拠に、鍼灸の効果はプラシーボ効果にすぎないと言われていました。当時も鍼灸師側の反論はありましたが、エビデンスに乏しかったのも事実でしょう。

しかし、研究者の方々の多大な努力の積み重ねにより、鍼灸の評価は10年前とは大きく様変わりしています。

今やコクランレビューでは、線維筋痛症、労働者の痛み管理、月経困難症、関節炎、緊張型頭痛、化学療法による嘔吐、肩痛、関節リウマチで、鍼灸が効果的と判断が出ています。※

現在、鍼灸の論文数は、アメリカの論文検索サイト「PubMed」で3万件を超えています。年間に600本以上の論文が出ているそうで、ランダム化比較試験だけでも年に100件以上です。

今はまだ効果を確認できていない症状・疾患に対しても、今後エビデンスが構築されていくことが期待されます。

※鍼灸臨床最新科学(2014,医歯薬出版株式会社)より