骨盤

今日は骨盤矯正について考えてみます。

腰痛の治療からダイエットまで、さまざまな効果がうたわれている骨盤矯正。はたして、その効果は本物なのでしょうか。

一度、ご自身でも「骨盤矯正 本当?」などで検索してみると参考になる記事がたくさん出てくると思いますが、基本的に骨盤矯正は「ウソ」です。

治療法や健康法が本当に効果があるかどうか判断するときに、便利な考え方があります。「医師が行っているかどうかで考える」です。

骨盤矯正に本当に効果があるのであれば、医師が使わないはずはないのです。この視点はとても役立ちます。

実際、医師で骨盤矯正を掲げている先生というのは、なかなかお目にかかれません。様々な効果があるといわれる骨盤矯正ですが、医師から見ると選択肢に入らないわけです。

違う言い方をすると、骨盤矯正にはエビデンス(科学的根拠)がありません。客観的に効果があるといえるだけの証拠はないのです。

骨盤のゆがみによる症状?

骨盤矯正を勧めるサイトを見ると、骨盤がゆがみで様々な症状が出て来ると書かれています。

  • 冷え、むくみ
  • 便秘、尿漏れ
  • 生理不順、強い生理痛
  • 不妊症
  • 腰痛、膝の痛み、股関節痛
  • 肥満、疲れやすい、肌荒れ

しかし、これらの症状と骨盤のゆがみに関連があるという証拠はありません。医学の世界ではしっかり骨盤も研究されていて、骨盤のゆがみは心配いらないことが判明しています。

骨盤のゆがみのサイン?

下肢長差を見て骨盤のゆがみを調べる方法がよく行われます。横になってもらって、左右の足の長さを比べて、差があったら骨盤がゆがんでいるとされます。

しかし、この方法で骨盤のゆがみを判定することは不可能です。なぜなら、もともと人は左右で足の長さが違うからです。人の骨格は、顔も左右で形が違いますし、腕の長さも利き腕の方が長くなります。

人は左右対称ではありません。いいかげんなテストでゆがみを指摘されたとしても心配する必要はないのです。

そもそも骨盤は動かない

骨盤は、寛骨、仙骨、尾骨の3つが合わさっていていて、非常にしっかりとした作りになっています。仙腸関節については、ほんの数ミリ動くとされますが、基本的には動かないと考えて大丈夫です。

もし、骨盤が触って分かるほど動いたら大問題です。体重を支えて歩くことができなくなってしまいます。まして、それを手の力で矯正しようというのも無理な話です。

唯一の例外は、女性の出産時です。この時だけは骨盤の関節がゆるんで赤ちゃんが通りやすくなります。

骨盤矯正の本質はマッサージ

骨盤矯正の本質はマッサージです。骨盤の周囲にある筋肉をマッサージして、足の長さをそろえたり、姿勢をきれいに見せたりしています。骨盤の形を変えているわけではないのです。

技術的にもそれほど難しくなく、マッサージ免許を持たない私でもすぐに再現できる程度のものです。

骨盤矯正がダイエットになるというのは、マッサージでむくみが解消されるからで、体脂肪が減るわけではありません。その他の諸症状が改善するのも、マッサージの効果であって、ゆがみの解消によるものではありません。

施術の効果は長続きせず、しばらく放置すると元に戻ります。私の友人に腕のいい理学療法士がいますが、彼に言わせると「体重かけて2~3時間もすれば元に戻る」とのことです。

産後骨盤矯正は必要なし

先ほど、唯一の例外として出産を挙げました。出産の際、リラキシンなどのホルモンの影響により、骨盤の関節はゆるみ、広がって赤ちゃんが通りやすい状態になります。

この影響で、出産後に尿もれなどが起こりやすくなります(妊娠中は別の理由で起こります)。具体的には骨盤底筋群が緩むのが主な原因です。この症状は、通常は3ヶ月以内に収まります。もし、それ以上続くようであれば、骨盤矯正ではなく、まずは病院を受診することをお勧めします。

妊娠・出産では、腰痛に悩まされるケースも多くなります。多いのは、妊娠中に腰痛になり、出産後にも痛みが続くケースです。こうした腰痛に対する骨盤矯正はどうかという問題ですが、やはりエビデンスがありません。

そもそも、妊娠・出産で起こる骨盤の変化は治療する必要がありません。放っておけば自然に元に戻るものです。

マッサージ的な効果を求めて骨盤矯正を受けるのは自由ですが、おすすめはしません。

恥骨結合離開に骨盤矯正(整体)は効果なし

妊娠出産に伴い稀に起こるものに、恥骨結合離開というものがあります。画像診断により、骨盤を構成する左右の恥骨が1センチ以上離れていると診断されます。こうなると、痛くて立って歩くのもつらいケースが出てきます。

では、恥骨結合離開に骨盤矯正は役立つかというと、病院でそのような治療は行われていません。離開が2.5センチ以下の場合は数日~1週間程度の安静にするくらいで、あとは自然に治るのを待つことになります。2.5センチ以上離れている場合には骨盤を支える靭帯が損傷しているため、手術が必要になります※。

軽度の恥骨結合離開が骨盤矯正で治ったように見えても、それは自然に治ったかプラシーボ効果(プラセボ効果)の可能性が高いでしょう。

まとめ

  • 骨盤矯正には根拠なし。
  • 骨盤のゆがみと症状に関連性はない。
  • 骨盤は動かないので心配いらない。
  • 骨盤矯正は、実はマッサージ。
  • 産後骨盤矯正もエビデンスはないのでお勧めはしない。

参考になりましたら幸いです。

※参考:今日の整形外科治療方針(医学書院)
※2017年3月17日公開の記事を加筆修正

参考⇒腰痛の原因と治し方(まとめ)