腰痛や肩こりの患者さんから、他の治療院で次のような生活指導を受けた、という相談を受けることがあります。

・足を組んではいけない
・椅子に座るときは骨盤を立てる
・アゴが前に出てはいけない
・肩は前すぎても後ろすぎてもいけない
・かばんを持つときには左右均等に持ち替える
・猫背になってはいけない
・頬杖をついてはいけない
・ベッドから起きるときに手をついてはいけない

このような指導は症状の改善にはつながりません。むしろ、症状に意識を向けてしまうので、悪影響があります。

正しい動作も姿勢も存在しない

こうした指導の根底にあるのは、正しい姿勢、正しい動作が存在するという思い込みです。そんなものはありません。善意からの指導であっても、間違っていては困りものです。

そもそも、人間は左右対称ではありません。利き腕がある時点で、左右を均等に使うこともできません。姿勢と体の痛みには関係がありません。

にも関わらず、体の使い方が悪いと痛みが悪化すると暗示をかけてしまう。そんな指導を受けていたら、日常のあらゆる行動が痛みの原因に思えてきて、不安になるばかりです。日常生活がストレスになり、生活の質が悪化します。

疼痛回避行動と痛みの関係

疼痛回避行動という言葉があります。痛い場所をかばったり、痛みが少なくすむように動くことをいいます。

疼痛回避行動が多いと、痛みの悪循環に陥りやすくなります。

痛い→怖い→動かしたくない・かばう→余計に怖くなる→ストレスが増える→脳が痛みに過敏になる→もっと痛くなる

全くいいことはありません。

「足を組んではいけない」といった指導の通りに、一日中気をつけて過ごしていると、疼痛回避行動が強まってしまいます。

逆です。

痛みを改善するためには、痛みから逃げないこと。痛くてもできることをすること。できたことに注目して、自信を取り戻すことが大切です。

痛くても別にいいのです。極論すれば、痛みを避けて寝たきりでいるより、痛くても活動的でいる方がずっと健康的です。そうこうしているうちに、痛みに注意が向かなくなって、脳が鎮痛作用を取り戻してくればしめたものです。

別に無理をしろとはいいません。動ける範囲で動けばいいのです。

慢性疼痛治療ガイドラインより
痛みの恐怖回避モデル

猫に学ぶ

猫

猫を見ましょう。

猫は液体という名言(?)があります。

彼らには「正しい姿勢」「正しい動作」なんて考えはありません。ただ、好きな姿勢を取っているだけです。

自然体でいいのです。

たまたま痛くなったときに、姿勢や動作のせいにされてしまった。日常の動作にたくさん注文をつけられてしまった。それは残念なことですが、そっちに引っ張られてはいけません。

いろんな先生がいるなぁと、適当に受け流して、真に受けないようにしましょう。