運動する女性

腰痛は安静にすべきではない

腰痛は「腰を痛めた」と表現されるように、腰に何らかのダメージを負ったと考えてしまうのは無理もないことです。「腰痛は腰が炎症を起こしているから、痛みがおさまるまで安静にしておくべき」と言われてしまうこともあるかもしれません。

損傷を受けている場合はRISE処置といって、安静(Rest)、冷却(Ice)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)という処置を取ることは当たり前に行われています。

ところが腰痛においては、この当たり前が実は間違いだったということが近年知られるようになってきました。多くの腰痛はそれまで考えられてきたような損傷ではないことが分かり、安静第一とする根拠が存在しないことが明らかとなったのです。

それどころか、むしろ動いた方が良い、動いた方が早く治るという根拠が多数示されているのが現状です。

急性腰痛は「安静にしない」

急性腰痛(4週未満)は安静にしないこと、普段の活動をなるべく維持するよう心がけることが大切です。

安静は必ずしも有効な治療法とはいえない.急性腰痛に対して痛みに応じた活動性維持は,ベッド上安静よりも疼痛を軽減し,機能を回復させるのに有効である.
職業性腰痛に対しても,痛みに応じた活動性維持は,より早い痛みの改善につながり,休業期間の短縮とその後の再発予防にも効果的である.

腰痛診療ガイドライン2012

こちらは日本の腰痛診療ガイドラインです。診療ガイドラインとは、医療者と患者が適切な意思決定をするための手助けとなる文書です。

急性腰痛では、可能な範囲で活動を維持することで、ベッドで寝ているより早い回復につながる。つまり、安静に寝ているとかえって治るのが遅くなってしまうことが示されています。

痛くて動けない場合は仕方ありませんが、多少痛くても動けるなら、普段の活動を維持する方が回復は早くなります。仕事や家事など、できる範囲で続けることをおすすめします。

慢性腰痛は「運動する」

慢性腰痛(3ヶ月以上)の場合は、運動することで痛みを減らして機能を改善できることが分かっています。運動療法といったりしますが、まさに治療法として運動が注目されています。

慢性腰痛に対する運動療法は有用である. (推奨度1)
腰痛診療ガイドライン2019

慢性腰痛に対する運動療法は,疼痛改善,機能改善,腰痛関連QOLの改善に対して効果がある.(推奨度1)
慢性疼痛診療ガイドライン

痛みが長く続いている方は「安静にしない」からもう一歩踏み出して、運動を試してみてはいかがでしょうか。日本だけでなく海外でも、運動は慢性腰痛を改善するとして推奨されています。
Exercise therapy for treatment of non-specific low back pain.
Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians

運動というのはすごいもので、単に筋力がつくとか、心肺機能が高まるというだけではありません。痛みが長引く続く患者さんは、脳が痛みを感じやすくなりますが、運動はその対策になることが知られています。

激しい運動をする必要はありません。軽いウォーキングでもいいのです。運動の種類は何でも構いませんので、無理のない範囲で、運動を日常にプラスしてみることをお勧めします。

運動は腰痛の予防になる可能性がある

体を動かすことは腰痛の治療として価値があるばかりでなく、腰痛を予防してくれるかもしれません。腰痛の予防法として見出されているのは今のところ運動だけです。

腰痛の予防法に関する20件のランダム化比較試験を分析した結果、腰痛ベルト・靴の中敷き・人間工学的介入・重量物挙上軽減教育に効果はなく、運動療法のみが腰痛とそれによる欠勤を予防できるという強力かつ一貫性のある証拠を発見。
High-quality controlled trials on preventing episodes of back problems: systematic literature review in working-age adults.

このように見ていきますと、運動にはいいことがたくさんあります。腰痛の対策としてだけでなく、健康にとてもいいですから、ぜひ長く続けられる運動を探してみてはいかがでしょうか。

参考⇒腰痛の原因と治し方(まとめ)