腰痛は、そのほとんどが検査で異常が見つからない安全なものでした。仮に異常が見つかっても手術が必要なケースは稀で、自然に治っていくものがほとんどです。

しかし、慢性化してしまうと治りにくくなることもよく知られているので、慢性化させないことが大事になります。そのためには、できるだけ普通に過ごすこと、不安や恐怖をかかえないことがポイントになります。

とはいえ、ただ自然に治るのを待っているだけというのもつらい話です。急性期(4週以内)では、痛くて動けなかったり、仕事や家事に影響が出てお困りの方も多いでしょう。もしくは、長引く腰痛に悩み、すでにいくつかの治療を試したが治らない、とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。

そんなとき、星の数ほどある腰痛治療の中から、何をどう選べばいいのでしょうか。そのヒントとして、この記事では最初にエビデンスレベルについて説明をしてから、腰痛診療ガイドラインに掲載されている治療法より、いくつかをご紹介します。

科学的根拠(エビデンス)の重要性

情報の裏付けとなる研究のことを科学的根拠(エビデンス)といいます。

ある治療法が有効かどうかを知るにはどうすればいいでしょうか。実際に治療を受けた人が治ったかどうかを確認すれば間違いなさそうに思えますが、これがそう簡単な話ではありません。

人にはプラシーボ効果(プラセボ効果)によって、意味のない治療であっても反応し、治してしまう力が備わっています。また、自然治癒というものもあります。

本当にその治療が効いて治っているのか?放っておいても同じように治ったのではないか?この疑念を払拭しないと、それは宗教的な儀式と大差ない可能性だって残されてしまうわけです。

そこで臨床試験を行い、自然治癒と比べた場合、もしくはニセの治療(プラセボ治療)と比べた場合で、どう優れているのかを確認することが大切とされています。

エビデンスレベルとは

エビデンスレベル

I システマティック・レビュー/ランダム化比較試験のメタアナリシス
II 1つ以上のランダム化比較試験
III 非ランダム化比較試験
IVa 分析疫学的研究(コホート研究)
IVb 分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
V 記述研究(症例報告やケースシリーズ)
VI 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見

科学的根拠(エビデンス)の強さにはレベルがあり、上に行くほど信頼性の高い根拠になります。最近はGoogle検索が優秀になってきたせいか、記事の中に根拠となる研究(論文)が示されていることも増えてきました。そうした情報を見るときの参考にしてみてください。

ランダム化比較試験(RCT)とは、ある治療の有効性を調べるときに、ニセの治療と効果を比較するものです。被験者が恣意的に偏らないように、くじ引きなどでランダムに振り分けます。

ランダム化比較試験が複数あって結果がばらついているときは、それらをまとめて検証するメタアナリシスという研究が行われます。

この表にはありませんが、動物実験や試験管の中での実験に基づいた情報もかなり出回っています。しかし、人間で確認されていない研究は、この表よりも下になると思っていただいて大丈夫です。ネズミに効いたものが人間に効くとは限らないからです。

一番下に、専門家の意見というものが入っています。医師の先生が言っていたからといって、間違いがないとは限りません。

診療ガイドライン

科学的な裏付けのある医学情報を集めて、診療ガイドラインというものが作られています。

診療ガイドライン(しんりょうガイドライン、英 Medical guideline)とは、医療現場において適切な診断と治療を補助することを目的として、病気の予防・診断・治療・予後予測など診療の根拠や手順についての最新の情報を専門家の手で分かりやすくまとめた指針である。
Wikipedia 診療ガイドライン

診療ガイドラインが絶対ではありません。この世の全ての治療法が科学的に検証されているわけでもありませんし、患者さんそれぞれの選択があります。ただ、信頼性の高い情報であることも事実なので、うまく参考にしてください。

ガイドラインで推奨される腰痛の治療法より

ガイドラインに挙げられている治療法も多数ありますが、一般的な腰痛でいきなり手術を検討することは稀だと思います。そこで、ここでは保存療法について主だったものを挙げていきます。

なお、日本の腰痛診療ガイドラインには勧告がありませんので、アメリカのガイドラインを参考にしています。

・鍼灸(しんきゅう)
鍼灸は、アメリカ最新の腰痛診療ガイドラインで、急性腰痛・慢性腰痛の両方で推奨されています。
改定前は推奨に入っていなかったのですが、その後の研究によって効果が認められ、推奨に入りました。

・マッサージ、脊椎マニピュレーション
こちらも急性・慢性の両方で推奨になっています。

・リハビリテーション
慢性腰痛において推奨されています。

・運動、ヨガ、太極拳
体を動かすことで、慢性腰痛の改善に効果が期待されます。

・マインドフルネス(瞑想)
ストレスを下げることで慢性腰痛の改善が期待されます。

・認知行動療法
慢性腰痛の治療として、近年高い注目を集めています。

・薬物療法
こちらは医師の先生とよくご相談ください。

アメリカ腰痛診療ガイドライン2017

・読書療法
2007年のアメリカ腰痛診療ガイドラインでは、「腰痛患者の教育とセルフケアのアドバイスを提供する資料(書籍、小冊子、またはリーフレット)を読むこと」が記載されています。腰痛の正しい知識が腰痛改善の手助けになることは自明ではありますが、研究によっても裏付けられています。

アメリカ腰痛診療ガイドライン2007

何を読んだらいいか分からない方は、個人的見解で恐縮ですが、以下の2冊をおすすめしておきます。
・腰痛ガイドブック 根拠に基づく治療戦略 長谷川淳史(著)
・人生を変える幸せの腰痛学校  伊藤かよこ(著)