脳(不調)
腰痛は骨の問題ではなく、筋肉のスパズム(不随意収縮・けいれん)によって起こります。これまでも色々な形で書いてきた話ですが、実はこれだけだと腰痛のメカニズム全体の半分くらいしか説明できていません。

痛みの発生についてはこれでいいのですが、受信側の話をしていないのです。すなわち、脳側の問題です。

最終的に痛みを感じるのは脳

痛みは、疼痛受容器というセンサーによって感知されます。センサーは基本的に全身に存在していて、これが刺激されると痛みの信号が生まれます。

発生した痛みの信号は、神経を通って脳に届きます。すると脳は「痛い」と感じます。このとき、腰で1の強さの痛みが発生したとして、それを脳が1として受け取ればいいわけですが、そうならない場合が多々あります。1の痛みを10にも20にも増幅して受け取ってしまうことがあるのです。

そんな馬鹿なと思われるかもしれませんが事実です。実際、患者さんの中には、炎症もないのに手で軽く触れただけで強い痛みを感じ、体を引きつらせてしまう方がおられます。痛みが増幅されているから起こることです。痛みの強さは、信号の強さだけでなく、脳の増幅度の影響が大きいのです。

痛みのことを考えると、もっと痛くなる

脳は、全身から様々な情報を大量に受け取り、必要な情報を取捨選択しています。例えば、目を閉じて耳をすますと、普段は気にならない小さな音が聞こえてきます。エアコンが小さく振動する音だったり、遠くの車の音だったり。

しかし、音に集中していると、他の感覚は意識にのぼらなくなります。例えば、足が床に触れる感触、イスの背もたれの感触などは意識されません。

では、意識を向けた先が痛覚だったらどうなるでしょう。普段気にならないくらい小さな痛みであったとしても、はっきりと感じられることになります。反対に、痛みとは別のことに意識を向けていると、痛みの増幅は抑えられます。

私はこれを知ったとき、古代中国の麻酔法を思い出しました。大昔の中国では、手術をするときに麻酔代わりに囲碁に熱中してもらっていたというのです。囲碁に集中していると痛みのことを忘れてしまって、それで手術ができたという話があるそうです。これと理屈は同じです。

痛みのことを考えていると痛みは強くなる。
他のことに目を向けると、痛みは相対的に小さくなる。

ぜひ知っておいて下さい。

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