ウィキペディアで調べる急性腰痛
便利で使わない人はほぼいないインターネット検索。そこで大活躍している百科事典サイトがあります。そう、皆さんよくご存知のウィキペディア(Wikipedia)です。
今日は、ウィキペディアで「急性腰痛症」について調べてみましょう。いわゆる、ぎっくり腰のことです。
急性腰痛症(きゅうせいようつうしょう、英: acute low back )は、突然腰部に疼痛が走る疾患で、関節捻挫・筋肉の損傷・筋膜性炎症などの症状をいう。
関節捻挫・筋肉の損傷・筋膜性炎症って・・・
はい、これを見て頭をかかえない医療者は腰痛の勉強が足りません。パーフェクトに間違っていますね。もう、ほんと見事という他はありません。
医療の世界では、医師や患者さんの意思決定のためのガイドラインというものがあります。これは、最低ラインを示すものではなく、その時点における医療の最高水準の知識を結集して作成される、極めて信頼性の高いものになります。(例外はあります)
さて、AHCPR(アメリカ医療政策研究機構)の『成人の急性腰痛診療ガイドライン』では、根拠のない診断名として、線維輪断裂・成人の腰椎分離症・筋筋膜炎・線維筋痛症・椎間板症候群・挫傷・脊椎分離症・腰部椎間板症・椎間関節症候群・変性関節症・捻挫・変形性脊椎症・椎間板障害/裂傷・脱臼・亜脱臼(サブラクセーション)の15を挙げています。
出てきましたね、「筋筋膜炎」「捻挫」「挫傷」。挫傷というのは損傷と同じ意味です。これらの診断名は、急性腰痛(ぎっくり腰)の診断名として適切ではありません。ウィキペディアは1行目から間違っているのです。これは困りました。
ウィキペディアの情報が間違っていることは珍しくも何ともない
Wikipediaの病気についてのページは、90%が間違い:米医師調べ
研究者のチームが、アメリカで最も広まっていて最も費用のかかる10の病気についてのWikipedia(ウィキペディア)の記事を評価した。同時に、フリー百科事典で知識を得る同僚たちに警告を発している。
何と、医師たちが調べてみたら、ウィキペディアの医療情報には間違いがたくさん含まれていたというんですね。病気のページ、10のうち9のケースに間違いや欠陥がありました。でもこれは、インターネットというものの性質を考えれば当然すぎる話です。
インターネットの情報というのは、誰でも自由に書き込むことができます。専門家でも素人でも、情報を発信するハードルに差はありません。匿名性も高いので、間違ったことを書いてもペナルティを受けるリスクが低いという性質があります。ウィキペディアも例に漏れず、誰でも編集できてしまいます。
また、一度書き込まれた情報がなかなか更新されないという性質があります。ブログ記事などは代表的ですが、一度書いたものを後から頻繁に書き直すような手間をかける人は限られています。古い情報がいつまでもそのまま残されてしまうのです。
さらには、Googleに代表される検索エンジンにも問題があります。検索エンジンは、情報を検索する人のことを第一に考え、有益な情報を提示しようとします。しかし、検索エンジンはそもそも情報の真偽を正確に判定する機能を持ちません。間違った情報であっても、人気のある記事であれば上位に上げてしまうケースがあるわけです。
そのため、正しい情報をインターネットから取得するのは、非常にリスキーで難しい作業です。「ウソをウソだと見抜ける人でないと難しい」という超有名な格言がありますが、これが本当に難しいのです。
参考になりましたら幸いです。