レントゲンは必要ない

これまでに書いてきた通り、大多数の腰痛はケガではなく、骨の異常といわれるような構造的な問題でもありません。そのため、一般的な腰痛に対して画像診断(レントゲン・MRI・CT)は必要ありません。参考記事

アメリカ→行うべきではない

例えば、アメリカの腰痛診療ガイドラインです。

「勧告2:臨床医は、非特異的腰痛を有する患者において、画像診断または他の診断検査を日常的に行うべきではない。(強い推奨、適度な質の根拠)」
Diagnosis and Treatment of Low Back Pain: A Joint Clinical Practice Guideline from the American College of Physicians and the American Pain Society

このように、かなり強い表現で画像診断を禁じています。
非特異的腰痛とは、一般的な腰痛だと考えていただいて大丈夫です。

日本→必ずしも必要でない

日本のガイドラインになると少し表現が変わります。

Grade A
腰痛患者に対してX線撮影を全例に行うことは必ずしも必要でない.
腰痛診療ガイドライン 2012 診断

レントゲン(X線)は必須ではないけれど、禁止でもない。そう読める表現になっています。日本において、腰痛で病院に行くとほぼ必ずレントゲンを撮られるのは、このあたりに理由があるのかもしれません。

実はどちらのガイドラインもよく読めば、「重篤な疾患の可能性があるときはレントゲンを使う」「そうでなければ必要ない」と同じことが書かれています。そのくせ、微妙な書き方の違いによって撮ってもいいように見えてしまうのは何ともではあります。重篤な疾患の可能性は簡単な問診でチェックできてしまうので、全員撮る必要はどこにもないのです。

日本の腰痛治療ガイドラインについては、他にも不可解な点がありますが、それはまたの機会にするとして。いずれにせよ、「レントゲンを撮っても腰痛の改善には役立たない」そして「レントゲンで分かる骨の異常は腰痛とは関係ない」という点を押さえておいておくといいでしょう。

病院で医師に「骨の隙間が狭い」とか「骨が変形してる」とか言われても、腰痛とは関係ありませんので気にする必要はありませんよ。「シワがありますね」と言われたのと同じで、大きなお世話なのです。

痛みをレントゲン写真で説明できなくなってきている

今回は腰痛の話にしていますが、実は似たようなことは首でも肩でも膝でもいえることです。

例えば、ストレートネックだからといって、首が痛くなるとは限りません。頚椎のヘルニアがあるからといって、痛みやしびれが出ると決まるわけでもありません。

五十肩は、医学的には「肩関節周囲炎」という名前があるにも関わらず、そのほとんどにおいて炎症所見が見られません。さすがの私も腱板断裂が起きた直後は炎症があるはずだと思いますが、腱板断裂があっても痛みを感じていない例は珍しくないといいます。

変形性膝関節症では、軟骨がすり減って炎症を起こすといいますが、実は軟骨がすり減っていても痛くない人が多数いらっしゃいます。変形性股関節症でも同様です。

痛みというものがいかに複雑であるか。痛む部位だけで説明できないものであるのか。少しでも考えていただければ幸いです。