宇宙飛行士のイラスト

これまで、腰に負荷をかけても心配はいらない、という方向で記事を書いてきましたが、今回はその逆。体に負荷が全くかからないと、どうなってしまうのか?という話になります。

負荷がないと骨も筋肉もどんどん弱くなる

体に全く負荷がない環境では骨も筋肉も急速に弱っていきます。

宇宙飛行士は、無重力という特殊な環境で生活します。体に全く負荷がかからないことは、健康によいどころか明確に悪影響があります。

宇宙では、地上で起こる骨粗鬆症の約 10倍の速さで骨量が減少するというのです。こうした変化は、無重力という特殊な環境だけで起こるものではありません。

ベッドで安静に寝ていること(安静臥床)でも、筋肉や骨はどんどん弱っていくことが知られています。寝たきりの生活だと、1年で24%も骨量が減ってしまうというのです。

長期臥床と宇宙飛行の骨量減少リスクの予防

私が鍼灸学生の頃、聞いた話をひとつ。

健康な大学生を2週間、ベッドで寝たきりにして筋力がどのくらい下がるか調べたところ、3割も筋力が落ちていたそうです。これについては、元の文献がどれなのかわかりません。

しかし、少し探してみたところ、寝たきりだと個人差はあるものの、1日に2~3%前後、筋力低下が起こるという情報が出てきました。10日で20~30%筋力が落ちてしまう計算で、かつて聞いた話とそうズレはないと思います。

不動・廃用症候群

似たような話は患者さんからも聞いたことがあります。

椎間板ヘルニアのため手術を受けた後、ベッドから起きてもいいと言わましたが、自力で立ち上がることができなかったそうです。寝ていた期間は1週間ほど。手術の影響も合わさってのことだとは思いますが、体に負荷をかけない状況は、かなり影響が大きいように思います。

体への負荷は必要です

世間を見渡すと、体への負荷を悪者扱いする情報が目に付きます。しかし、本当に負荷は有害なのでしょうか?

昔は、デスクワークなどで長時間イスに座る生活は、腰に負荷が大きいので腰痛になると言われがちでした。今はどちらかといえば、座ってばかりだと運動不足になるので、健康に良くないと言われます。ならば、運動という形で、もっと色々な負荷をかけるべきともいえるでしょう。

体への負荷を悪者だと考えていると、腰をかばうこと、体を動かさないこと、痛みを怖がることが習慣化していきます。それだと、健康が徐々に遠のいていく可能性が高くなります。

体に負荷をかけるリスクは思いのほか小さく、心配いらないものがほとんどです。それより、負荷をかけないリスクの方がずっと大きいのです。