遠隔治療が先、局所治療が後

治療の流れとしては、腰の痛む所(局所)を治療する前に離れた所を治療します。

なぜ真っ先に簡単な局所治療をしないのかというと、局所の痛みが抑えられていると遠隔治療の効果予測がうまくいかないことがあるからです。例えば、前かがみになったときに腰が痛むとすると、遠隔の経穴(ツボ)を押圧して前かがみになっていただき、痛みが減るか確認したりします。先に局所の痛みを取ってしまうと、こうした判定ができなくなってしまいます。

時折ですが、遠隔治療→局所治療と行っても効果が不十分なことがあります。その場合は体勢を変えて鍼をします。座った姿勢、もしくは立った姿勢です。同じ経穴であっても、体勢を変えることで全く違った効き方をすることは珍しくありません。

腰痛治療に限りませんが、全ての技術・知識を総動員して治療にあたっています。

慢性腰痛には遠隔治療が不可欠

腰痛の鍼灸治療は、腰の治療をする前に手足など離れた所から治療するのが基本になります。腰の治療も必要ですが、それだけだと特に慢性腰痛において、治るのが遅かったり痛みが元に戻りやすいという問題が出ます。

痛い部分から離れたところから治療する方法を「遠隔治療」といいます。これには複数の考え方がありえます。

  1. 筋硬結を離れたところから緩める
  2. 筋硬結を生み出した自律神経を整える
  3. 脳の痛み感受性を抑制する

そのための治療理論としては東洋医学が必要になってきます。鍼灸師の中には東洋医学理論を使わずに効果を上げる先生もいらっしゃるかもしれませんが、私は不可欠だと考えています。

少し専門的な話をすると、1は陽経の治療もしくは奇経治療、2と3は陰経もしくは臓腑の治療という方法になります。患者さんには1~3をまとめて「全身を整えます」という言い方をしたりもします。

1については、経絡を使わずとも筋連結やトリガーポイントなどの理論でも対応できるとは思います。2は東洋医学理論を使った方がやりやすいと思います。3については、背部兪穴(脊椎近傍)の鍼通電療法で代用できるかもしれません。

実際のところ一つの理論しか使わない鍼灸師も珍しいので、大抵は頭の中に複数の理論があって、その中から最善を選ぶことになります。私の場合は難経を重視しますので陰陽の調整に最も神経を使いますが、同時に現代医学的な視点も維持します。極端にどちらかに偏っているのはよくないと考えています(といいますか、勉強していると偏れなくなります)。

効果が現れるまでにかかる時間は、1が最も早くその場で変化が分かります。2の自律神経は3~5回くらい治療して効いてくることがあります。3については患者さんの心理的・社会的背景などの影響により大きな個人差が出ます。

遠隔治療で具体的にどの経穴を使うかは一概にいえません。よく使うものだけでも20~30はあり、その中から反応の出ているもの、効果が見込めるものを選んで使うことになります。

局所治療も外せない

腰のツボ2

腰痛を鍼灸で治療するとき、一番簡単なのは腰の痛い所にしっかり鍼を刺すことです。これを局所治療といいます。痛みを起こしている筋肉を緩める方法は有効です。

遠隔治療で全身を整えたら、局所の治療を行ないます。ギックリ腰(急性腰痛)の場合は、あえて局所治療のみに絞ることがあります。単純に痛みを減らすことだけを考えた場合に、遠隔治療が邪魔になることがあるからです。

痛みを起こしているポイント=硬結をうまく狙えていないと、鍼をしても変化がないことがあります。手応えがないとき鍼の方向を数ミリ変えることでうまく響くことがあります。

硬結を探すには押圧してみるのが分かりやすいですが、硬結が深いところにあると正確な場所が特定しづらいことがあります。圧痛だけを頼りにするのでは限界がありますので、どうしても手の感覚を研ぎ澄ますことになります。もちろん患者さんの訴えも極めて重要です。

局所治療は比較的その場で効果を実感してもらいやすいのが特徴で、急性腰痛ならこれだけでもかなり痛みを減らすことができます。ただし、慢性腰痛(3ヶ月以上経ったもの)では局所だけでは不十分です。冒頭で書きましたが、局所治療だけだと仮に痛みが消えたとしても後から再び痛みだす場合があるからです。

参考になりましたら幸いです。

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