活動が萎縮する

体が痛い。

痛いことの問題って何でしょう。
いや、痛いことそれ自体が問題なのですが、それだけで終わりません。

痛いとき、人は気持ちがポジティブになれません。
当然ながら、活動的にもなりづらいです。

痛みの程度にもよりますが、痛くて仕事を休んだり、普段できている家事をしなくなったり、出かける用事をキャンセルしたり、人と会いたくなくなってしまったり。

痛みのせいで、社会的な活動、人と接する活動がだんだんと縮小していってしまうことがあります。
これが一番のデメリットではないかと考えています。

若い方であれば、それほど大きな問題にはならないかもしれません。
しかし、高齢になると、痛みが社会的な孤立のきっかけになるケースも出てきます。

痛みと社会。
一見すると無関係に思えますが、これが非常に深い所でつながっています。

痛みと社会的因子

近年、痛みを引き起こしたり長引かせる要因として、心理社会的因子というものが注目されています。
単純にストレスと言ってしまわないところがポイントです。
心理的因子だけではなく、社会的因子も重要とは、どういうことでしょうか。

社会的因子。

社会とは、つまり人と人とのつながりです。
人とのつながりに問題が起きることが、痛みを引き起こしたり、長引かせたりしてしまう。
この考え方は今や世界的にベーシックなものとなっています。

人という生物は一人で生きることはできません。
社会的な孤立は、身の安全がおびやかされている状態でもあります。
そこには強い不安があることでしょう。

そして、不安というのは痛みと非常に相性がいい。
いや悪いと言った方がいいのかもしれません。

つまり、不安は痛みを助長します。
近年の研究から考えれば、不安は痛みを引き起こすことさえあります。

社会的因子と痛みは密接な関係にあります。
痛いことで社会とのつながりに問題が出る。
社会とのつながりに問題が起きたことで、痛みを引き起こす。
どちらも起こり得ることです。

あまり具体的なことは書けませんが、高齢で、ご家族との縁が切れてしまって、頼れるのが介護の人だけになってしまい、その介護の方が家族を名乗って治療を依頼してこられたケースがありました。
症状は全身痛。
社会的因子の影響の強さを感じずにはいられませんでした。

人のつながりで痛みを乗り越える

人との良好なつながりを持つこと。
体と何の関係もなさそうなことですが、これが痛みの克服にも重要だと考えられています。

痛みの治療法として近年注目されている、認知行動療法というものがあります。
痛みの受け取り方を再学習することで、痛みを小さくしようとする治療法です。
この治療法では、少人数のグループを作って、小さくとも社会的なつながりを作ります。
自分と同じように、痛みに苦しむ仲間の存在は大きな励みになるようです。

痛みのことを考えるとき、つい体の問題だと考えてしまいがちです。
ですが、痛みのことを知ろうと思えば、もっと広い領域について知る必要が出てきます。

参考になりましたら幸いです。

社会的なつながり