A いくつかの条件を満たすと、保険(療養費)で鍼灸を受けることができます。

鍼灸で保険を使う場合は、「療養費」という制度を使います。
療養費とは、治療用装具(コルセット・サポーター)などと同じ枠組みで、申請すると後から費用が給付される形式です。

申請の方法は現在2つあり、どちらの方式かは保険者によって変わります。

※保険者とは、保険事業の運営団体のこと。⇔被保険者

償還払い ご自身で請求する場合

治療を受けて窓口で全額を支払った後、患者さんご自身で申請を出す方式のことを「償還払い」といいます。

ややこしいですが、一通り手順を書いておきます。

償還払い申請の手順(例)

保険が使える疾患

  • 神経痛
  • リウマチ
  • 頚腕症候群
  • 五十肩
  • 腰痛症
  • 頚椎捻挫後遺症(むちうち)
  • その他(慢性的な痛みのある疾患で、医師と保険者が認めたもの)

最後のその他は実質的に存在しませんので、6つの疾患に当てはまることが第一条件になります。
他の疾患では保険は適用されません。

ご自身が加入している保険者(保険運営団体)に鍼灸で保険を使いたい旨を伝え、療養費の申請用紙を手に入れておきます。
医師の同意書用紙を手に入れます。(鍼灸院にあります)

同意書の用紙を持って病院・医院へ行き、医師の診察を受けて、鍼灸を受けたい旨を伝え、同意書に記入してもらいます。
これが大きなハードルです。
同意書を書くなという通達が医師会から出されているそうで、なかなか書いてくれません。
かかりつけの内科の医師に相談するのがポイントだと思います。
同意書の発効には、千円~数千円の費用がかかります。

同意書を書いてもらえたら、2週間以内に鍼灸院で初回の治療を受け、領収書をもらいます。
保険者からもらった申請用紙に記入・押印して、必要書類を添えて療養費を申請します。

申請が認められれば、療養費が支給されます。
療養費は、鍼灸院の治療内容・金額設定とは無関係に以下のように定められています。

平成30年6月1日より

1 はり、きゅう
(1)初検料
① 1術(はり又はきゅうのいずれか一方)の場合1,610円
② 2術(はり、きゅう併用)の場合1,660円
(2)施術料
① 1術(はり又はきゅうのいずれか一方)の場合1回につき 1,540円
② 2術(はり、きゅう併用)の場合1回につき 1,580円
注 はり又はきゅうと併せて、施術効果を促進するため、それぞれ、はり又はきゅうの業務の範囲内において人の健康に危害を及ぼすおそれのない電気針、電気温灸器又は電気光線器具を使用した場合は、電療料として1回につき30円を加算する。
(3)往療料
2,300円
注1 往療距離が片道4キロメートルを超えた場合は、2,700円とする。
注2 片道16キロメートルを超える場合の往療料は往療を必要とする絶対的な理由がある場合以外は認められないこと。
(4)施術報告書交付料
300円
参照元

初診における、はりきゅう2術・電気加算の療養費は合計で3,270円、3割負担だと窓口料金が981円、保険者負担分が2,289円です。
2回め以降は、療養費の合計が1,610円、3割負担だと窓口料金が483円、保険者負担分が1,127円です。

再同意
医師の同意書は効力が6ヶ月です。
鍼灸治療を継続する場合、6ヶ月ごとに同意書を書いてもらう必要があります。

受領委任払い ご自身で申請しない場合

鍼灸院が健康保険の取扱をしている場合は、手続きを鍼灸師に代行してもらうことができます。
この方式を「受領委任払い」といいます。

保険による施術をどのように行っているかは鍼灸院によって違いますので、よくご確認ください。

例1
通常は1時間で5000円のところ、保険からの収入分を料金から差し引いてくれるケース。
5000-1127=3873 ⇒窓口負担 3873円(治療時間1時間、3割負担の場合、初検料別)

例2
保険(療養費)の範囲で可能な施術のみ行うケース。
1610×0.3=483 ⇒窓口負担483円(治療時間15分、3割負担の場合、初検料別)

受領委任払い申請の手順(例)

6疾患であることが第一条件です⇒神経痛、リウマチ、頚腕症候群、五十肩、腰痛症、頚椎捻挫後遺症(むちうち)。

鍼灸院で同意書の用紙をもらいます。

同意書の用紙を持って病院・医院へ行き、医師の診察を受けて、鍼灸を受けたい旨を伝え、同意書にサインをもらいます。

保険証、印鑑、医師の同意書を持って、2週間以内に鍼灸院で初回の治療を受けます。

残りの申請は鍼灸師が代行してくれますので、継続して治療を受けてください。

同意書は6ヶ月ごとに更新する必要があります。
その都度、医師の診察を受けて同意書の発行を受けてください。

継続的にその鍼灸院で治療を受けると決めてから手続きすることをお勧めします。
治療を1回でやめてしまうと同意書の費用で赤字になるかもしれません。

また、保険者が不支給の判断をした場合、保険者負担分は施術を受けたご本人負担になることにご留意ください。

鍼灸の保険(療養費)の問題点

何といっても、同意書を書いてくださる医師が少ない。
これが大きなハードルとなっています。
同意書は、かかりつけ医か内科の先生にお願いするといいかもしれません。

また、療養費の支払いに応じるかどうかが保険者の自由となっているのも問題です。
申請しても認められない場合、裁判になるケースもあるようです。
その他、受領委任払いを認めない、つまり償還払いのみ可能な保険者や、鍼灸師会を通しての請求でないと認めない保険者もあります。
加入している保険者にご確認ください。

鍼灸で保険を使う場合、その疾患について医師の治療を受けていないことが条件になります。
例えば、腰痛症で医師から薬や湿布を出されている場合、鍼灸院で腰痛の治療を受けても保険は使えません。
「はり、きゅうの療養費の支給対象となる疾病は、慢性病(慢性的な疼痛を主訴とする疾病)であって保険医による適当な治療手段のないもの」と定められているためです。
ただし、傷病名が違う場合は使えます。

保険が適用される疾患が少ないのも問題です。
鍼灸でカバーできる疾患はもっと多いので、例えば変形性膝関節症などは正式に認められてもよいのではないかと思います。
今後の制度改正に期待したいところです。

以上、参考になりましたら幸いです。