先に結論
先に結論を表にまとめておきます。
鍼灸 | 整体 | |
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定義 | あり | あいまい |
公的な資格制度 | あり | 無し |
根拠となる法律 | あはき法 | 無し |
治療の手段 | はり・きゅう | 徒手 |
分類 | 医業類似行為 | 無資格施術 |
保険の適用 | 一部あり | なし |
行われている地域 | 世界中 | 日本のみ |
医学研究、医学論文 | 多数あり | ほぼ無し |
施術中の事故の扱い | 医療過誤 | 傷害事件 |
事故の発生頻度 | 低い | 年間200件前後 |
定義
鍼灸
鍼灸とは、身体に鍼や灸を用いた刺激を与えることで、多様な疾病への治療的な介入や健康増進を目指す医療技術です。
整体
整体(せいたい)とは、主に手技を用いた民間療法、代替医療を指します。
ただし、定義はあいまいで、定まったものはありません。
公的な資格制度
鍼灸
国家資格である、「はり師」「きゅう師」の資格を取得することで、鍼灸師として仕事ができます。
資格を取るには、養成学校で3年以上教育を受け受験資格を得た後、国家資格に合格する必要があります。
整体
公的な資格がないため、その気になれば、誰でもいつでも整体師を名乗ることができます。
数年かけて民間資格が取得できる整体の学校も存在しています。
整体師が資格を掲げている場合は、民間資格であることが多いようです。
民間資格とは、企業など民間の団体が独自に認定している資格です。
国家資格である鍼灸師も、それに加える形で学会などの団体が認定する民間資格を取得している場合があります。
根拠となる法律
鍼灸
いわゆる「あはき法」、正確には「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」によって法規制されています。参考
整体
整体法のような法律は存在しません。
判例により、「人の健康を害することがない限り罰せられない」という位置づけです。
また、日本国憲法第22条第1項により、職業選択の自由として認められます。
法的にはグレーゾーンと考えて差し支えないでしょう。
施術の手段
鍼灸
鍼(はり)、灸(きゅう)による施術です。
整体
徒手による施術が一般的です。
分類
医業類似行為として公的に認められているのは、鍼灸師(はり師きゅう師)、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師で、資格制度のない整体は無資格施術と呼ばれています。
無資格施術には、カイロプラティックやオステオパシー、リフレクソロジーなども含まれます。
保険の適用
鍼灸
6つの疾患に該当すること、医師の同意書が発行されることなど、いくつかの条件をクリアすると健康保険(療養費)の対象となります。
こちらの記事を参考にどうぞ:Q 鍼灸で健康保険は使えますか? 手続き、窓口料金、問題点など
整体
健康保険の適用はありません。
行われている地域
鍼灸
古代中国で発祥し、飛鳥時代に日本に伝わったとされています。
鍼灸は現在では欧米をはじめとした世界中で行われています。
整体
日本の大正時代に生まれたと考えられており、主に日本でのみ行われています。
医学研究、医学論文
鍼灸
鍼灸の研究は世界中で行われており、医学論文も多数存在しています。
日本では、明治国際医療大学(旧明治鍼灸大学)をはじめ、多くの大学で研究が行われています。
整体
残念ながら、整体の医学的な研究はほぼ行われていないのが現状です。
施術中の事故
鍼灸
医療過誤として扱われます。管轄は保健所です。
整体
傷害事件となり、警察署の管轄となります。
事故発生頻度
同じ形式での調査がありませんので断言はできませんが、おおむね鍼灸を受けて事故に遭遇する確率は低いといえます。
鍼灸
こちらの資料によると、約1000人の会員のうち3年間で鍼灸の事故が起きたのは8件(そのうち気胸2件)という報告があります。参考
海外の論文などでも、鍼灸は安全性が高いと報告されています。参考
整体
こちらの消費者庁の資料によると、毎年200件前後の事故が報告されています。参考
カイロプラティックについて
アメリカ発祥の整体ともいうべきカイロプラティックについて、厚生労働省が注意喚起しています。
2 いわゆるカイロプラクティック療法に対する取扱いについて
近時、カイロプラクティックと称して多様な療法を行う者が増加してきているが、カイロプラクティック療法については、従来よりその有効性や危険性が明らかでなかったため、当省に「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」のための研究会を設けて検討を行ってきたところである。今般、同研究会より別添のとおり報告書がとりまとめられたが、同報告においては、カイロプラクティック療法の医学的効果についての科学的評価は未だ定まっておらず、今後とも検討が必要であるとの認識を示す一方で、同療法による事故を未然に防止するために必要な事項を指摘している。
こうした報告内容を踏まえ、今後のカイロプラクティック療法に対する取扱いについては、以下のとおりとする。
(1) 禁忌対象疾患の認識
カイロプラクティック療法の対象とすることが適当でない疾患としては、一般には腫瘍性、出血性、感染性疾患、リュウマチ、筋萎縮性疾患、心疾患等とされているが、このほか徒手調整の手技によって症状を悪化しうる頻度の高い疾患、例えば、椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、環軸椎亜脱臼、不安定脊椎、側彎症、二分脊椎症、脊椎すべり症などと明確な診断がなされているものについては、カイロプラクティック療法の対象とすることは適当ではないこと。
(2) 一部の危険な手技の禁止
カイロプラクティック療法の手技には様々なものがあり、中には危険な手技が含まれているが、とりわけ頚椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法は、患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要があること。
(3) 適切な医療受療の遅延防止
長期間あるいは頻回のカイロプラクティック療法による施術によっても症状が増悪する場合はもとより、腰痛等の症状が軽減、消失しない場合には、滞在的に器質的疾患を有している可能性があるので、施術を中止して速やかに医療機関において精査を受けること。
(4) 誇大広告の規制
カイロプラクティック療法に関して行われている誇大広告、とりわけがんの治癒等医学的有効性をうたった広告については、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第十二条の二第二項において準用する第七条第一項又は医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第六十九条第一項に基づく規制の対象となるものであること。
引用元
まとめ
鍼灸 | 整体 | |
---|---|---|
定義 | あり | 無し |
公的な資格制度 | あり | 無し |
根拠となる法律 | あはき法 | 無し |
治療の手段 | はり・きゅう | 徒手 |
分類 | 医業類似行為 | 無資格施術 |
保険の適用 | 一部あり | なし |
行われている地域 | 世界中 | 日本のみ |
医学研究、医学論文 | 多数あり | ほぼ無し |
施術中の事故の扱い | 医療過誤 | 傷害事件 |
事故の発生頻度 | 低い | 年間200件前後 |
ご覧になって分かる通り、鍼灸と整体はまったくの別物です。
腕の良し悪しについては個人の問題なので、一概に結論を出すことはできません。
下手な鍼灸師もいれば、上手い整体師もいることでしょう。
ただ、腕の良し悪しについて、ホームページやチラシの情報で判別する方法はありません。
しかし、より安全な施術を受けられる可能性が高いのは、鍼灸だと考えていただいてよいのではないでしょうか。
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