私がまだ鍼灸学生だった頃の話です。とある柔道整復師に言われました。
「浦崎さんは背骨がゆがんでいるから、将来腰痛になりますよ。」
ショックでした。自分はいまは健康だけど、いつか腰痛になってしまうのだろうか。不安を覚えたものです。
当時はまだ知識が浅く、言われたまま不安になってしまいました。しかし、今ならはっきり否定することができます。
「背骨のゆがみは腰痛とは関係ない」
そして、
「根拠のない予言で人を不安にさせる行為こそ、腰痛を作り出す」
ということです。
背骨のゆがみについては、こまでにも何度も書いていますので省略しますが、要は健康な人も全員ゆがんでいるということです。
ストレスが腰痛を生み出す
今日の強く言いたいことは2つめの方。人に「腰痛になる」と予言することが、腰痛を生み出すという点です。
なぜなら、腰痛の原因はストレスだからです。病気を予言されると、人は強いストレスを受けます。ストレスは単独で腰痛を引き起こしますので、そういう予言を繰り返していれば、本当に腰痛になる人が出てきてしまうのです。
それが確率の高い、十分予測される未来ならばまだ分かります。しかし、間違った根拠にもとづいて腰痛を予言されたのでは困ります。人を必要のない不安に落とし入れることは、医療者の行動として問題があると言えます。
怖がると腰痛は再発しやすくなる
腰痛を何度も再発する人には特徴があります。腰痛を怖がるという点です。
「いまは調子が良いけれど、また腰痛になったらどうしよう。念のためにコルセットをつけておいた方がいいんじゃないか。重たい物を持たないようにした方がいいんじゃないか。立ち上がるときは負担がかからいよう立ち方に気をつけよう。」
痛みのない時に、腰痛のことばかり考えている。それがストレスとなって腰痛を再発する。悪循環。まさに病は気からです。
世の中は、テレビでも雑誌でも、腰を大切しなさいという情報であふれています。言葉を変えれば、腰痛を怖がりなさいというメッセージです。それが腰痛を増やしている状況があります。
意識を向けると痛みは強くなる
臨床の場では、しばしば痛みの強さを客観的に把握するために数字を使います。今日の痛みは10段階で6くらい、という表現です。しかし昨今では、この評価方法は患者さんの意識を痛みに向けてしまうため、逆効果であるという指摘もあります。人は痛みのことを考えていると、痛みをより感じやすくなってしまうからです。
まして、医療者から「あなたは腰痛になります」と予言されたら。
こういったカラクリを知らない人は、予言された通りに腰痛になると、「あの先生は凄い!」という評価をします。しかし、そうではないのです。そんな予言は信じてはいけないのです。
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