天気の影響はあります
気象病という言葉もありますが、天気の変化によって調子が悪くなったり、痛みが強くなることはあります。人の体を調整してくれている自律神経は、気圧の変化を受けてバランスが変わります。例えば、低気圧になると自律神経は副交感神経優位に傾きます。このときに痛みが強くなることがあります。患者さんの中には、低気圧の接近を痛みで察知してしまう人もいます。
ただ、あんまりこれっていい話ではありません。なぜかというと、体の感覚、特に痛みに普段から意識が向いていることの現れでもあるからです。痛みは意識を向けるとより鮮明に、より強く感じられるものです。
カクテルパーティー効果をご存知でしょうか。ガヤガヤと騒がしいパーティー会場でも、意識を向けるとその中の会話を聞き取ることができます。意識を向けたところが鮮明になり、他はぼやけて意識から遠のきます。これと同じことが痛みについても起こることが分かっています。
映像を見るだけで痛みを感じやすくなる
人が痛みを感じている姿を映像で見せるという実験があります。画面の中では誰か知らない人が痛そうな顔をしています。それを見ている被験者は何も痛みを感じていませんが、脳の反応を見ると悪影響が出ていました。映像を見ただけなのに脳の痛みの感受性が高まってしまうのです。
共感とでもいえばいいのでしょうか。痛みに気持ちが向くと、それだけで痛みを感じやすくなってしまいます。
赤の他人の映像だけでも悪影響があるわけですから、ご自身の痛みに意識を向けるのはより強いマイナス効果があるとご理解いただけるのではないでしょうか。天気の影響で痛みが出ることは事実としてありますが、そこに意識を向けるのは痛みを強くするだけなのです。
痛みを「流す」「遠ざける」
腰が痛い。しばらくしたら雨が降ってきた。やっぱり腰が痛いのは低気圧のせいだ!
こんな体験を積み重ねていると、低気圧と痛みが記憶の上でも強く結びついてしまいます。すると、痛くなくても、雨の天気予報を見ただけで痛くなってしまったりするのです。確信を強めるほど、痛みも強くなります。
いや、そもそもの話。低気圧は自律神経に作用しますが、絶対に痛みを起こすとは限りません。低気圧で自律神経に影響を受けるのは全員ですが、痛いのは全員ではないのです。むしろ大多数の人は低気圧の影響を意識しません。
天気の変化によって痛みが出る方は、普通の人よりも痛みを感じやすくなっているとお考えください。その上で、少しずつ考え方を変えて、痛みを今より強くしないように工夫してみるのがいいと思います。
腰が痛くなってきた。低気圧かな?
そう考えてしまうのは仕方ないのですが、痛みに一瞬意識が向いても、すぐにそれを流して他のことを考えるようにするのがコツになります。痛くても、自分が達成できるていること、楽しいことに目を向けることです。
痛いけど・・・
仕事はできている。
家事や育児はしっかりやっている。
人に会うために外出できている。
旅行が楽しみで仕方ない。
いま見ているテレビが面白い。
意識の上から痛みを遠ざけ、他のことに意識を向けてみてください。痛みのことを考えないようになると、やがて体の痛みも遠ざかっていくものです。
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