インターネットに限らず、テレビや雑誌でも、「体のバランスが崩れると腰痛になる」という情報で溢れています。
ここでいうバランスとは、骨格のバランス、姿勢・アライメントの話です。背筋がきれいに伸びていて、左右対称で傾きがない状態が最も健康的な姿勢だというわけです。しかし、はたして本当にそうでしょうか?
人は全員ゆがんでいる
医療者ならば知らない人はいない事実として、人の体は全員ゆがんでいます。臨床に立って、患者さんの背中を見ればすぐ分かることです。まっすぐにきれいな人なんて、そうそういるものではありません。
そもそも、利き腕というものがあります。誰でもそうですが、利き腕は反対の腕よりも長く太くなります。この時点で、人は左右で体の重さが違います。
それだけではありません。利き腕があれば、利き足があります。利き目もあります。食事の際の噛み癖もあります。左右を均等に使うことはできず、多く使われた側は骨も筋肉も発達するわけですから、それに伴って必ず左右のバランスは崩れます。人は全員ゆがんでいるのです。
加えて、人の体は内臓にしても左右対称ではありません。心臓はやや左に片寄っていますし、肝臓は右側にしかありません。すると、胸の高さでは左が、お腹の高さでは右側が重たくなります。それにつられて、背骨も微妙に湾曲します。それが正常です。
加齢変化から考えてもバランスと腰痛は無関係
人の体は年齡に応じて変化します。ほとんどの人は普通に立ってもらうと、肩や腰の高さが左右で違います。右利きの場合は、右肩が下がって、骨盤の右側が上がり気味になるのが普通です。この体のゆがみは、小学校の高学年くらいになると徐々に現れてきます。
もし、体のアンバランスが腰痛の原因ならば、小学校高学年頃から腰痛が増え始めるはずです。しかし、現実には全くそんなことはありません。腰痛は20歳を過ぎたあたりから増え始め、30~40歳頃にピークを迎えます。未成年で腰痛になる人は少数です。
では、もっと年齡を重ねるとどうでしょうか。高齢者になればなるほど、体のゆがみは大きくなります。背中も曲がってきますし、筋力も衰えます。ところが、腰痛人口は30~40歳をピークにしてその後は減少します。実は統計をとると、高齢者の腰痛はそれほど多くないのです。
ですから、やはり「体のバランスが崩れると腰痛になる」とはいえないのです。