腰痛で整形外科に行くと、高い確率でレントゲンを撮ることになると思います。
レントゲン(X線撮影)をはじめとした画像検査には、痛みの原因を突き止めてくれるのではないかという期待があるわけですが、実際には痛みの原因を画像検査だけで突き止めることは困難だといわれています。
また、レントゲンを撮っておくことが、腰痛を治療する上で有利かといえば、必ずしもそうではないようです。
レントゲンを撮ると治りが悪い
レントゲンの効果を調べるため、421人の腰痛患者を、レントゲンあり・なしに振り分けて、追跡調査した研究があります。
・3ヶ月時点
レントゲンあり 74%(148/199)がまだ痛みがある
レントゲンなし 65%(132/203)がまだ痛みがある
・9ヶ月時点レントゲンあり 65%(126/195)がまだ痛みがある
レントゲンなし 57%(113/199)がまだ痛みがある
研究の結果、3ヶ月が経過した時点で、レントゲンを撮ったグループは腰痛の改善率が低いことが分かりました。
9ヶ月が経過した時点では、レントゲンの有無による統計的な有意差はありませんでした。パーセントで見るとレントゲンなしの方が改善していますが、誤差の範囲ということです。
レントゲンなどの画像診断は、レッドフラッグに該当する腰痛では必要になります。しかし、病気の心配がない多くの腰痛(非特異的腰痛)においては、治療に役立たない可能性があります。
腰に問題がないかハッキリさせないと不安という場合もあるかもしれませんが、レントゲンで分かるのは形の異常だけです。形の異常があっても、痛いと決まるわけではありません。
ただ,形態学的な評価には常に問題がつきまとう.それは,腰痛を形態学的評価のみで行っては,質的,そして機能的評価が不十分になることである.なぜならば,腰痛と形態学的な異常とは直結しないからである.(腰痛 第2版 菊地臣一)
海外の腰痛診療ガイドラインでは、レッドフラッグのない腰痛に対する画像診断を禁じています。
レントゲンには放射線被曝のリスクもあります。レントゲンを撮れば安心というような単純なものではないことを知っておいて損はないでしょう。
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