腰痛は原因が見つからないことが多い
腰痛の85%が原因不明
画像診断(レントゲン・MRI・CT)は、がん等の重篤な疾患を見つけるためには必要だといわれる一方で、大多数をしめる普通の腰痛を見分けることができません。明確な診断がつかない腰痛のことを「非特異的腰痛」といいます。
レントゲンやMRIを使うと、椎間板ヘルニアや脊柱菅狭窄症などの背骨の異常が見つかることがあります。しかし、骨や椎間板の異常が見つかったとしても、すぐにそれを腰痛の原因だと決めることはできません。
椎間板ヘルニアだから痛いとは限らない
椎間板ヘルニアは、背骨を構成する骨と骨の間にある椎間板というクッションが後方に飛び出して、神経を圧迫すると一般に考えられています。ところが、画像診断で圧迫が確認できる神経と、痛んでいる場所が食い違っていることがあります。例えば、右にヘルニアがあるのに左が痛いこともあるわけです。このような場合、例え椎間板ヘルニアがあるとしても、それで痛みを説明することができません。
そればかりか、椎間板ヘルニアがあっても、痛みがない人は大勢いることが分かっています。1995年、腰痛のない健康な人を調べたところ、76%に椎間板ヘルニア、85%に椎間板変性が見つかりました。こうなると、ヘルニアの有無だけで腰痛を説明することができません。
1995 Volvo Award in clinical sciences. The diagnostic accuracy of magnetic resonance imaging, work perception, and psychosocial factors in identifying symptomatic disc herniations.
骨に異常があるから痛いとは限らない
背骨の異常には様々な種類がありますが、背骨に異常があっても痛みなく健康に過ごしている人は大勢いることが分かっています。同じような調査は複数行われていますが、現在では「画像診断だけで腰痛があるかどうか知ることは不可能」というのが腰痛医療の常識となりつつあります。
こうした背景をもとに欧米では「非特異的腰痛には画像診断は不要」とするガイドラインが作られるようになっています。
診断がつく腰痛は一部にとどまる
明確な診断がつく腰痛は「特異的腰痛」と呼ばれます。こちらは腰痛全体の15%程度とされていて、そのうち重い病気が見つかる確率はさらに低くなります。
- 悪性腫瘍 0.7%
- 椎体圧迫骨折 4%
- 脊椎感染症 0.01%
- 強直性脊椎炎 0.3%
- 馬尾症候群 0.04%
(Jarvik JG & Deyo RA, Ann Intern Med, 2002/Deyo RA, at el, JAMA, 1992)
ほとんどの腰痛は心配のいらない非特異的腰痛です。
原因不明といっても治療法はある
原因の特定できない非特異的腰痛の治療については、鎮痛剤や手術の他にも様々な方法が医学的・科学的に検証されており、その中から信頼性の高い方法、安全な方法が見出されています。例えば、鍼灸もその一つです。また、認知行動療法や読書療法といった、新しい治療が注目を集めています。
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