腰痛など体が痛い場合や自律神経症状が代表的ですが、病院で検査を受けても異常が見つからず、「所見なし」とされてしまう場合があります。しかし、鍼灸師はこうした症状の治療はむしろ得意分野です。
病院で異常が見つからないのに、鍼灸師は一体、何をどう見て治療をしているのでしょうか。
病院で異常なしでも、異常はある
鍼灸師は病院で異常なしと言われた患者さんのどこを見ているのか?一言でいうと全部なのですが、もう少し具体的にいえば、「見て、聞いて、触れて分かること」を見ます。すると、血液検査やレントゲンでは分からない異常が見つかります。
見て分かる情報
見て分かる情報で分かりやすいのは顔色です。とはいっても、単に顔が全体的に赤いとか青白いとかいうだけではありません。眉間=心、左頬=肝、右頬=肺、鼻=脾、顎=腎というように、顔色の変化する場所と内臓とを関連付けて見ます。
また、舌の色や形を見て判断したり、顔つきの特徴から体質を推理したり、姿勢の特徴から内臓のバランスを読み取る方法もあります。病院では全く重要とされない所にも心身のサインは発せられていると考えています。
現代医学でも視診といって、見て分かる情報は大切ですが、一般的な腰痛や自律神経失調症で視診に力を入れることは少ないでしょう。もしかすると患者さんではなく、レントゲンや血液検査の結果ばかり見ているかもしれません。
聞いて分かる情報
いわゆる問診です。病院でも当然に行われている問診ですが、鍼灸師が参考にするポイントには違いがあります。
腰痛だとしたら、腰のどこが痛いのか、いつから痛いのか、きっかけは何か、ストレスは溜まっていないか、この辺は病院でも同じでしょう。しかし、足は冷えるか、暑がりではないか、イライラすることは多いか、胃腸の調子はどうか、便通はどうか、動悸はないか、睡眠の質はどうか、味覚に異常はないか、食事の偏りはどうか、等は病院で聞かれることは少ないのではないでしょうか。
症状に関係ある所見がどこまでか、その広さに違いがあります。範囲が広いのです。鍼灸の診察では、例えば患者さんの性格も大事です。性格のタイプによって体質にも特徴が出てきますし、現れやすい症状も違ってくると考えています。声の出し方にも分類があって、治療の参考にしています。
どんな人なのか?その人に何が起きたのか?その結果、どうなっているのか?だとしたら治療法は?という流れになります。
※厳密には聞診と問診に分かれます。
触れて分かる情報
鍼灸では触診は非常に重要です。例えば、ツボの状態を触れて確認します。胃のツボが硬いとか、肝のツボが弱いといった情報を指先で読み取っています。内臓に病気というほどの問題がなくても、少し疲れているとか負担がかかっているという情報はツボに現れてくるものです。
また、何といっても脈診が特徴的です。どんな病気のときにどんな脈になるのか、太さ・硬さ・速さ・深さなど細かく分類されていて、そこから治療法を導ける理論が作られました。脈で何が分かるのかと不思議に思うかもしれませんが、今の状態を読み取り、治療法を決定するための指針になるものです。
病院でも触診が行われる場合はあります。しかし、全ての患者さんに行ってはいません。鍼灸の場合は、患者さんの今の状態を知るために必ず触診をします。手でないと分からない情報があって、そこで勝負しているといっても過言ではありません。
全ての情報を総動員する
こうした体の外から得られる情報を総動員することで、状態を判断して治療しています。鍼灸は太古の昔に生まれました。レントゲンも血液検査もなかった時代、医家たちはあらゆる手を尽くして、外から体の中を知ろうとしました。その方法が現代においても役立っているということです。
最初に全部を見ていると書きましたが、実際に鍼灸師がどこをどう見ているのか、少しでも伝わったでしょうか?
まとめ
病院の検査で異常なしと言われたのに、鍼灸師はなぜ治療できるのか?
⇒ 病院とは違った視点で得られた情報を総動員しているから。
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