まずは動画をどうぞ
先日ツイッターにも貼りましたが、こちらの動画がとても参考になります。まずはこちらをご覧ください。
痛みの悪循環を断ち切る講義動画 体を動かして悪循環を遮断
痛みが慢性的に続いてしまう場合、治すためには最終的に運動が必要になります。「痛いから動けない」と皆さんお考えかもしれませんが、「動かないから治らない」というのが実際のところなのです。
痛みは体と脳の問題
痛みには、体の問題、脳の問題の2つがあります。
体の問題とは多くの場合、筋肉の血行不良と酸欠です。これによって痛みが発生してしまいます。
脳の問題は、痛みのコントロールが乱れることです。脳は筋肉で生じた痛みを電気信号として受け取っています。このとき、脳は痛みの強さをコントロールしているのですが、いくつかの要因が重なるとその働きが乱れ、必要以上に痛みを感じやすくなることが分かっています。極端な例では、ごく軽く触れるだけでも激しい痛みが起こる人もいます。
脳の痛みコントロールが乱れるのは、ストレスの影響によるところが大きいと考えられています。「ストレスがない」とおっしゃる方も中にはいますが、それはストレスという言葉の意味を狭く考えているか、ストレスを抑圧(見て見ぬふり)している可能性があります。
ストレス(心理社会的因子)の例
- 家族・知人の死、自分や家族の怪我や病気
- 結婚、離婚、夫婦別居
- 就職、失業、転職
- 社会的な責任の変化、生活状況の変化、労働条件の変化
- 親戚トラブル、上司とのトラブル
- 借金、法律違反など
また、当然ながら体が痛いということ、それ自体が大きなストレスになります。ストレスが全く無い人というのはいませんので、現代人は多かれ少なかれ、何かしらのストレスを抱えていることになります。
ストレスを解消し脳の機能を回復するために運動する
溜まったストレスは何らかの方法で解消する必要があります。その方法の一つが「運動」です。
<悪循環>
ストレスが溜まる
↓
脳の痛みコントロールが乱れる
↓
余計に痛くなる
<運動すると>
運動する
↓
ストレスが減る
↓
脳の痛みコントロールが回復する
↓
痛みが減る
運動でストレスを解消できる。これに異論を唱えることは困難です。基礎医学においても、比較試験においても、運動は有益であることが明らかです。そして、一般に考えられているほど運動には弊害がありません。
スポーツ選手のような、極端に体を追い込むトレーニングをすると体をこわすこともあるでしょう。ですが、軽いジョギングやウォーキングレベルなら、体を痛める心配をせずに運動することができ、ストレスを下げることができます。もし運動して痛みが強くなったのなら、運動をもっと楽なものに変えればいいのです。
鍼灸だけで万全ということはない
もしかすると「いや、そんなことより治療して治してくれ」とお考えの方もいるかもしれません。もちろん、鍼灸は痛みを減らしますし、脳の痛みコントロールを高めることも期待できます。鍼灸のみで治る可能性はあります。
しかし、それはどんな患者さんも必ず鍼灸だけで100%治せますとお約束できるほど強力無比なものではありません。というか、そんな治療はこの世にありません。(ウソをつく人はいるかもしれませんが)
鍼灸治療の目的は痛みを減らすことですが、正確には「痛みを減らして、患者さんが不安なく体を動かせるようにすること」です。鍼灸で痛みが軽くなったら、運動していただきたいのです。
・痛みを怖がらないこと
・普段から、痛くない範囲で体を動かすこと
・いま出来ている日常の活動をそのまま続けること
・脳を活性化して痛みコントロールを回復させること
これができるのは、鍼灸師ではありません。
あなた自身です。
運動療法という言葉があります。運動は治療なのです。
手軽にできてお金もかからない運動。これを放棄してしまうのは、ちょっともったいないと思いませんか。1日5分のウォーキングからでも構わないので始めてみませんか?
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