Aさんの話です。
Aさんは、毎日のように仕事をしていて、激務の連続です。重い荷物を運ぶ肉体労働で、1日の睡眠時間は4~5時間、休日も十分とれていないという状況が続いていました。
あるとき、急にまとまった休みが取れることになりました。1週間の休日。Aさんは、ここぞとばかりに体を休め、リラックスした休日を堪能しました。
ところがです。連休の5日目のこと、ふと床に落ちているゴミを拾おうとして前かがみになった瞬間、腰に激痛が走りました。ぎっくり腰です。痛くて痛くて、身動きできません。「せっかくの休日に、どうしてこんなことに・・・!?」
実は、Aさんが突然ぎっくり腰に見舞われたのは、リラックスのしすぎが関係しています。おそらく、何をいっているか分からないと思います。順を追って説明していきます。
肉離れや骨折・捻挫などのケガをのぞき、体に起きる痛みの大部分は筋肉が引きつって起こります。足の筋肉が引きつればこむら返り、肩の筋肉が引きつれば五十肩、腰の筋肉が引きつればぎっくり腰です。
筋肉の引きつりは、疲労がたまって起こります。疲労がたまって、たまって、あるラインを超えたとき、突然筋肉が引きつります。しかし、あるラインとはいっても、決まったラインがあるわけではありません。どの程度の疲労で筋肉が引きつるかは、状況によって変わります。
忙しく仕事をこなし、気をゆるめることができない緊張状態では、交感神経が興奮していて体は常に戦う状態になっています。この状態では、ラインは上がっていて、ちょっとやそっとのことで筋肉は引きつったりしません。もちろん限度はありますが、比較的無理ができる状態です。
反対に、休日は副交感神経が優位に働いていて、リラックスした状態になっています。体は戦闘態勢になっていませんから、仕事をしているときと比べるとラインは下がっていて、筋肉が引きつりやすい状態です。しかし、休日で疲れも徐々に抜けていくので、たいていは問題ありません。
問題になるのは、たまりにたまった疲労が抜けていないのに、過度にリラックスしてしまった状態です。Aさんのたまりにたまった疲労は、5日間の休息でもまだ抜けていなかったのです。ですが、久々の連休でAさんは完全にリラックスムード。普段よりはるかにラインは下がっていて、非常に筋肉が引きつりやすい状態だったのです。そして、普段もっとも酷使している腰に負荷がかかった途端、ラインを超えてしまい、筋肉が引きつって動けなくなってしまったというわけです。
休日は、ゆっくり過ごして体の疲れを抜くことが大切です。しかし、リラックスしすぎるのも良くない場合があります。Aさんの話でいえば、1~2日くらいの休日ならば、問題はなかったかもしれません。長い休日で、過度にリラックスしすぎてしまい、ラインが下がりすぎてしまったのが問題でした。
もちろん、普段の仕事をセーブできるなら、それが一番ではあります。そこまで疲労をためていなければ、長い休日をどう過ごしても、何も問題は起こらなかったでしょう。しかし、それができれば悩みはないわけで、非常に難しい問題です。
- 投稿タグ
- 健康と科学