注意すべき腰痛は一部だけ
腰痛は基本的に怖いものではありませんが、中には注意が必要なものもあります。
腰痛全体の1~5%ほどですが、がん、脊椎炎、馬尾症候群などを見分けるために、次のようなチェック項目(レッドフラッグ)があります。
腰痛のレッドフラッグ
- 発症年齢 <20歳 または>55歳
- 時間や活動性に関係のない腰痛
- 胸部痛
- 癌,ステロイド治療,HIV*
- 感染の既往
- 栄養不良
- 体重減少
- 広範囲に及ぶ神経症状
- 構築性脊柱変形
- 発熱
*HIV:Human Immunodeficiency Virus
・高齢での腰痛発症、体の体勢を変えても同じように痛む、原因不明の体重減少など→がんの可能性(腰痛全体の0.7%)
・ステロイド治療の経験→圧迫骨折の可能性(腰痛全体の4%程度)
・膀胱障害、サドル麻痺などの神経症状→馬尾症候群の可能性(腰痛全体の0.04%)
・発熱→脊椎感染症の可能性(腰痛全体の0.01%)
レッドフラッグに該当したらからといって、必ずその病気と決まるわけではありません。病院でしっかり検査を受けて、問題ないと分かれば普通の腰痛(非特異的腰痛)です。普通の腰痛は対処さえ間違えなければ普通に治っていくものです。
ヘルニア、狭窄症は怖くない
レッドフラッグの「広範囲に及ぶ神経症状」ですが、椎間板ヘルニアや脊柱菅狭窄症が怖いという話ではありません。
神経症状としては,急速進行性または明らかな筋力低下を合併する重篤な神経脱落症状,膀胱直腸機能障害の有無を評価すべきである.特に,尿閉は馬尾症候群の合併を示唆する.
ガイドラインは、「明らかな筋力低下」「尿が出ない」というような、普通の腰痛・坐骨神経痛ではないものに注意せよと言っています。馬尾症候群は腰痛全体の0.04%とかなり珍しい疾患ですが、緊急手術が必要になるので見落とせないものになります。
椎間板ヘルニアや脊柱菅狭窄症はそれほど怖い疾患ではありません。その痛みは自然治癒する傾向があるので、最近では手術より保存療法が選ばれることが多くなっています。
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