「腰痛の原因は姿勢のゆがみ」
このような主張はインターネットをはじめとしたあらゆるメディアで目にします。もしくは、骨盤のゆがみが原因だとする記事もたくさんあります。どちらも、ゆがみによって筋肉に余計な負担がかかり痛みが出るという理屈です。
でも、本当にそうでしょうか?体がゆがむと腰痛になって、ゆがみを正すと治るというような単純な話なのでしょうか。
姿勢と腰痛には関係がない
「正しい姿勢」でネット検索すると、このような画像が大量に出てきます。
19世紀にドイツのブラウンとフィッシャーが正常姿勢というものを定義したそうですが、それが元になっているのでしょう。頭頂部から両足の間に向けて重心がきれいに落ちている、まっすぐな姿勢が正しいといわれます。
しかし、このような姿勢は重心のバランスとしては理想的かもしれませんが、健康的かどうかは別の話です。
腰の曲がり方と腰痛に関係がないという研究
1957年に腰痛患者200人、健常者200人を比較した研究があります。それによると、姿勢異常の検出率に差がありませんでした。側湾症にいたっては健常者に多く見つかりました。これはつまり、姿勢と腰痛には関係がないということです。
腰椎前湾というのは腰の反り具合のことで、それが過剰なのはいわゆる反り腰、減少しているのは腰が平坦で猫背の人に多い姿勢です。しかし、どちらであっても腰痛の心配はいりません。
腰のカーブが過剰だとか減少してるといわれると心配になりますが、個性の一つであって、健康に影響するものではありません。
仙骨から調べても関係はないという研究
もう一つ研究をご紹介します。
急性腰痛患者200名、慢性腰痛患者200名、健常者200名を対象にレントゲンで仙骨の角度(ファーガソン・アングル)を比較しました。その結果、3つのグループに差はありませんでした。
仙骨の角度はその上に続く腰の反り方に直接影響します。ですから、仙骨の角度と腰痛に関係がないということは、腰の反り具合と腰痛には関係がない、という話になります。腰は曲がっていても反っていても真っ直ぐでも、腰痛の原因にはなりません。
The lumbar lordosis in acute and chronic low-back pain.
骨盤のゆがみは腰痛と関係なし
次に、骨盤のゆがみについてです。
1999年に発表された研究です。腰痛患者144名と健常者138名を対象に、骨盤のゆがみを詳しく調べました。その結果、どのような意味においても骨盤のゆがみと腰痛は無関係という結論が出されました。
The association between static pelvic asymmetry and low back pain.
昨今、骨盤矯正という施術が行われていますが、そもそも骨盤と腰痛には関係がありません。
骨盤は寛骨、仙骨、尾骨が合わさってできていますが、基本的に動かない一つの固まりです。仙腸関節については数ミリだけ動くことが分かっていますが、ほぼ動かないと考えて差し支えありません。骨盤が何かの拍子にゆがむなんて普通は起こりませんし、もし手で動かせるほど軟弱なら人は立って歩くことができません。
骨盤矯正といわれるものは、骨盤の周りの筋肉をマッサージしているのであって、骨盤そのものを矯正しているわけではないのです。
余計な心配を取り除くことが大切
このように、姿勢のゆがみ・骨盤のゆがみは、腰痛とは関係のないものです。
医療関係者に「ゆがんでいる」と指摘されると、誰だって不安になります。しかし、人は全員、何かしら体のゆがみを持っています。定規で線を引いたような背骨を持つ人なんていませんし、肩の高さが左右きれいにそろっている人もいません。右利き左利きもありますから、人体に左右対称はありえません。
体の問題を指摘されて不安になることは、それだけで腰痛にとってマイナスになる可能性があります。不安は痛みを大きくする傾向があることが近年分かってきているからです。
姿勢を心配するより、心に余計な負担をかけない方が腰にはずっといいのです。
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