今回は「根本改善」という言葉について掘り下げてみたいと思います。
魅力的だけど、疑問もたくさん
昨今、多くの治療院で根本改善がうたわれています。この言葉を見ると、「根本から改善できるなら、100%か、限りなくそれに近い確率で治るのだろう」と感じてしまいます。また、「原因をしっかり特定してくれるだろう」と想像して、非常に頼もしく感じてしまいます。根本改善が魅力的な言葉であることは間違いありません。
しかし、私はこの言葉を目にすると頭の中に大量の疑問が湧き上がってしまいます。
「症状の根本って具体的には何?」
「根本って一つしかないの?」
「発症の原因や機序が判明して、それを取り除いても、予防にはなっても治療になるとは限らないのでは?」
「何の根拠があって、根本を改善していると断言しているのだろう?」
「本当に根本改善できるならノーベル賞級の快挙だけど、論文などでその理論を世に訴えているんだろうか?」
「実際のところ、治癒率・有効率はどのくらいだろう?」
・・・キリがないのでこの辺でやめますが、根本改善という言葉を使って本当に大丈夫なの?とドキドキします。そして、書いてある改善率を目にして、ガッカリしたりもするわけです。数字が書いてあるのはかなり良心的ですが、普通の数字なのに「圧倒的」などと書かれている例も多いようです。
腰痛の根本改善って、具体的に何をしてるの?
現在判明している中で、最も腰痛の原因である可能性が高いのはストレス(心理社会的因子)になります。しかしながら、ストレスをゼロにしたら腰痛が治るかというと、必ずしもそうではありません。ストレスを取り除いても、即座に体が受けた影響が消えるわけではないからです。また、ストレスのない環境を選べる人もそう多くはないでしょう。
では、腰痛治療は具体的に何をしているのかというと、様々な仮説を立てて、仮説に基いてアプローチしています。多くの治療院で「根本」とうたわれているのは、正確には「根本(仮説)」です。
例えば、「腰痛の根本原因は姿勢であり、姿勢を整えると腰痛が治る」という仮説に基いて施術した場合、腕にもよりますが8割以上は何らかの効果が出るでしょう。効果が出ると、仮説は正しいように感じられます。しかし、姿勢が悪いと腰痛を発症するかといえば、答えは「全く関係なし」になってしまいます。姿勢が悪くても元気な方、たくさんいらっしゃいます。
統計上、姿勢と腰痛に関連性がないのに、どうして姿勢を整えると腰痛が改善するのかは、残念ながら不明です。最新医学も腰痛の全てを解明してはおりません。
ちなみに、もし改善率(有効率)7割だとプラシーボ効果と同レベルになりますので、その施術を受ける価値はありません。
プラシーボ効果(プラセボ効果)についてはこちらの記事をどうぞ→プラセボ効果について
当院の仮説と改善率
当院の場合は、
「腰痛は自然治癒力の低下である」
「自然治癒力を支える自律神経と免疫を整えれば、腰痛は治る」
「自然治癒力を高めるには、東洋医学的な鍼灸が最善である」
という仮説を立てています。
少し古い数字ですが、当院における腰痛の改善率(有効率)は95%、治癒率(痛みが全くない)は87%です。ほとんど治癒していたけれど、通院が途切れて完全に治ったのをこの目で確認できなかった症例は治癒に含めていません。1回で治った例もありますが、多くは2~7回ほど週に1回ペースで施術しています。
まとめ
まとめると、腰痛の根本改善とは、腰痛の根本について仮説を立てて施術を行い、改善をはかることです。これ自体は特別なことではなく、ごく当たり前の治療行為になります。
参考になりましたら幸いです。
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