「脈診のご紹介」の続きです。

脈診は鍼灸の診察において、非常に重要な位置にある技術です。しかし、いまでは脈診をしない鍼灸師の方が圧倒的に多くなってしまっています。習得が難しいのが一番の理由です。

脈診の大きな目的の一つに、ツボの判定があります。ツボは体にたくさんありますが、その全てが効くツボではありません。状態によって、効くツボと効かないツボが変化します。

例えば、胃の調子が悪いとしましょう。胃が悪いときは胃のツボを使うのですが、胃のツボは軽く数十個以上あります。全てに鍼をするわけにはいきません。たくさんのツボの中から、より効果的なツボを探し出す。そのために脈診を行います。

胃の調子が悪いとき、脈にも胃の不調が反映されます。そこで、効くツボに指を触れると、脈が正常に変わります。指をツボから離すと、もとの調子の悪い脈に戻ります。効かないツボに触れても何も起こりません。この変化を指先で読み取ることで、効くツボと効かないツボを判別することができます。

脈診の精度が上がると、治療もよく効くようになります。不思議なことをしているように見えるかもしれません。職人の世界に通じるものがあります。以前テレビで、ピカピカに磨かれた金属のごくわずかな凹凸を指先で感知する職人さんを見たことがあります。脈診に似ていると思いました。

人の指先はどこまで研ぎ澄ますことができるのでしょう。より良い鍼灸のために、今後とも精進を続けます。