その痛み、本当に使い痛みですか?

右肩が痛いとき、あなたはどんなことを考えるでしょうか。

カバンを右手で持ってばかりだったなとか、右利きだからいつも右側ばかりに負担がかかっているなとか、色々思い当たることが出てくると思います。しかし、それが本当に原因なのでしょうか。

いわゆる、使い痛みというものがあります。体の一部分に過度な負担をかけ続けると、やがて痛みになるという話はたしかにあります。
でも、今までずっと同じように使ってきたはずです。それが「過度な負担」だったのでしょうか。少しずつ疲れが蓄積してしまって、それがついに限界を迎えたのでしょうか。もう今までと同じように右肩を使うことはできなくなってしまうのでしょうか。

そういう場合もあるとは思いますが、そうでないことも多々あります。いや、そうではない場合の方がずっと多いのです。

負担をかけてもかけなくても、痛くなるときは痛くなる

そんな馬鹿なと思われるかもしれませんが、事実です。体の痛みというのは、その8割くらいは原因が特定できないのです。それこそ、何気なく手を挙げただけで右肩に激痛が走るケースもあります。では、手を挙げたことで筋肉を損傷する可能性はあるかというと、ありません。肉体がダメージを受けていなくても、痛みは起こり得るということを知っておいて下さい。

痛みの発生メカニズム

    ストレス

    脳の扁桃体が異常に活動

    交感神経過緊張

    筋肉の緊張、血行不良、酸素欠乏が発生

    痛みが起きる

    さらなるストレス(繰り返し)

ちょっと難しいかもしれませんので、詳しく解説します。体の痛みの原因として、一番可能性が高いのはストレスになります。イメージが湧きにくいかもしれませんが、ストレスの影響は大きいです。

人はストレスを受けると、脳の扁桃体という部分が反応します。どんな種類のストレスであっても、それが不快であれば扁桃体が反応します。すると、怒り・悲しみ・不安・恐怖といったマイナス感情が心の奥底で強くなります。

扁桃体が活発に働き出すと、交感神経が緊張します。いわゆる「アドレナリンが出る」という状態で、体は戦う体勢をつくります。しかし、一時的ならいいのですが、長期にわたって緊張が続いてしまうと、さまざまな問題が出てきます。

筋肉が緊張したままになる、血行が悪くなる、血行が悪いと十分に酸素が行きわたらなくなる。こうして、体のどこかが悲鳴を上げます。酸素が足りないと体を作っている細胞がやられてしまいますから、痛みの信号が発生するわけですね。ここで痛みが起こります。

意外かもしれませんが、体に何も負担をかけていなくても、痛みが出ることは珍しくありません。例えば、頭痛が起きた時に頭に負担をかけすぎたかなと考える人はいないでしょう。でも、負担はかけていなくても頭痛になることはありますよね。痛みとはそういうものです。

そして、しばしば体の痛みはそれ自体がストレスとなって、さらに扁桃体を刺激してしまいます。すると、さらに体は緊張して痛みは強くなります。悪循環ですね。

ストレスを受けたときに沸き起こる感情の代表格、それが怒り・イライラです。あなたは、心のどこかでイライラしていませんか?

東洋医学における右肩の痛み

東洋医学では、右肩の痛みは肝に問題があると考えます。肝はイライラがつのると調子が悪くなる臓腑とされていて、その影響は右肩に出ます。

とはいえ、これは何も東洋医学でだけ言われていることではありません。現代医学においても、肝臓の病気があるときに右肩が痛くなったり、妙に右の肩こりが強くなったりすることは知られていることです。こうした内臓の不調が体の痛みとして出て来るものを関連痛といいます。

右肩の痛みが肝のせいと考えることも、イライラから痛みが起こると考えることも、どちらも特殊な話ではありません。

イライラに気づくだけで解決することもある

また、このことは鍼灸院で患者さんを診ていても当てはまる例がよくあります。治療院の外でも、右肩が痛いという女性に「最近、イライラがたまっていませんか?」と尋ねたところ、「そうなんです!実は…」と色々話をされ、その後スッキリして痛みがなくなったという例まであるくらいです。

もしあなたが右肩の痛みでお悩みなら、それはイライラがたまっているからかもしれません。一度何かで思い切り発散することを考えてみてはいかがでしょうか。