鍼灸治療には遠隔治療という方法があります。これは患部から離れた場所のツボを使って治療することで、私もよく使います。これを使う一番の理由は、離れた場所からでしか治せない場合があるからです。

痛みの治療を行う場合はまず患部を診るわけですが、その場所の筋肉が硬く張っているのはよくあることです。そこで、筋緊張を落とすことで痛みも取れるだろうと考えるのですが、一つ大切なポイントがあります。痛みのある場所に硬結があるかどうかです。

硬結というのは、筋肉の一部分だけが硬くしこりになっているものをいいます。筋肉をゴムひもに例えるなら、一箇所だけこんがらがった状態といっていいでしょう。この硬結に鍼をすれば、筋緊張は和らぎます。

しかし、痛む場所に硬結がない場合が頻繁に見られるのです。硬結がないのに筋緊張が高いのはどうしたことでしょう。実は、ずっと離れた場所にできているのです。

筋肉は解剖学的に見ると一つ一つの部品ですが、働く時は複数が連動して機能します。ボールを思いっきり握ると、手以外の場所にも力が入るように、一つの筋肉の緊張は他の筋肉へと伝わっていくのです。

例えば、腰が痛いのに腰に硬結がない場合、大抵は足に硬結が出来ています。そこに鍼をすると、連動する筋肉も一緒に緊張が緩んで、腰の痛みが楽になります。この時、腰の痛い場所のみの治療だと、あまり効果がないか、効果があっても長続きしないことになります。

このメカニズムは東洋医学でいう経絡の虚実に相当するのですが、それだと難しいので今回は現代医学的に解説してみました。