普通、お医者さんというと、内科や外科のように、専門分野を掲げています。そして、しばしば、患者さんが相談に行くと「それは○○科へ行ってください」と他の科を勧められ、結局たらい回しになってしまうことがあります。

例えば、腰が痛いとしましょう。ほとんどの方は、まず整形外科を受診されると思います。そこで、椎間板ヘルニアでも見つかれば、疾患が決まって治療が始まります。

しかし、見つからなければ他の可能性を探さなければいけません。骨に問題はないなら、脳を調べようとMRIを撮ることもあるでしょうし、ストレスから腰に来ているとなれば心療内科ということもあります。

例えばうつ病の患者さんには、高い割合で腰痛が見られるので、腰痛で心療内科というのは間違っていません。しかし、自分はどう考えてもうつ病ではないし、元気だ。ただ腰が痛いだけなのに、どうしてこれといった治療がないのだろう。そう疑問に思われる方もたくさんいらっしゃいます。

ここで、鍼灸を思い出す方もおられるでしょう。お知り合いの誰かから、鍼灸を勧められることもあるでしょうか。

鍼灸院は病院と大きく違っていて、専門科に分かれていません。中には例外もありますが、鍼灸医学を普通に勉強していれば、何でも診るのが当たり前になります。鍼灸師はたいてい何でも屋です。

なぜ、そうなるかというと、病気と健康のとらえ方に理由があります。鍼灸医学では、病気とは心身のバランスが乱れた結果だと考えます。
どんな症状であれ、バランスを調えることで治療ができます。

また、バランスが整っていれば、症状はなく、健康だと考えます。よく健康増進といいますが、プラスマイナスゼロより上を目指すと、プラスに片寄っていってバランスが崩れますので、特別な健康というものはないと考えております。

病院はどちらかというと、はっきり原因の部位が分かる病気が得意です。骨折だとか、内臓の病気だとか、そういうものは病院に行かれるのベストでしょう。
ウィルスなどの感染も病院がいいでしょう。

どこが悪いかはっきりしない、自律神経やストレスといわれる症状は、鍼灸の得意分野です。悪い場所がはっきりしないのは、体全体のバランスが崩れているからで、鍼灸はまさに全身を調える医学だからです。

二つの医学をよく知って、上手に使い分けていただければ幸いです。