腰痛の多くは検査をしても異常が見つかりません。痛みの発生源は主に腰の筋肉であり、慢性化のメカニズムについては脳の変化によるところが大きいと考えられます。レントゲンで腰痛を知ることはできないのも仕方のないことです。
では、これらの変化は何によって引き起こされるのでしょうか?
腰痛の危険因子(リスクファクター)
腰痛のリスク、つまり、何によって腰痛になる可能性が増えてしまうのでしょう。病気や疾患と呼ばれるものも影響しますが、大多数の腰痛は病院に行っても異常が見つかりません。それよりも社会環境やストレス、考え方や行動パターンなどの影響が大きいでしょう。
例えば、医師に背骨の異常を指摘されて不安になったり、自分の腰痛はもう治らないと悲観的になったり、痛みを恐れて、いつもとは違う行動パターンに変えてしまったり。一見、腰とは関係なさそうなことが腰痛に関係することを医学は明らかにしてきました。
そして、場合によっては、家族関係や職場環境(特に人間関係)、社会政策までもが腰痛に関係してきます。
腰痛を治す=原因を取り除く?
腰痛は複合要因といわれます。一つの原因によって引き起こされるのではなく、いくつもの危険因子が重なった結果起こるということです。原因を一つに特定できれば楽かもしれませんが、腰痛でそのような考え方をするとかえって迷路に迷い込んでしまうかもしれません。
人は機械ではありません。壊れた部品を取り替えたら新品同様、というわけにはいきません。
よくある間違いとして、「腰痛の原因は背骨のゆがみ」という説明があります。背骨のゆがみを矯正すれば腰痛が治るというのです。しかし、本当にそれで全て解決するでしょうか?
プラシーボ効果(プラセボ効果)によって、腰痛が消える可能性はあります。ただし、それは「私の腰痛の原因は背骨のゆがみだった」という間違った信念を形作り、強固にするかもしれません。「また背骨がゆがんだらどうしよう」という不安、「背骨がゆがんだらまた腰痛になってしまう」という間違った思い込みにつながることが懸念されます。
「背骨のゆがみと腰痛は無関係」「腰痛の多くは自然に治る」「腰のことを心配するほど痛みが悪化する」という医学の常識から大きく外れて、余計な心配を抱え込み、かえって腰痛(再発)のリスクを高めてしまう可能性があるわけです。
それよりは、「痛みとの付き合い方を知ろう」「ストレスとの付き合い方を知ろう」と考える方が根本的な解決に近いといえます。
不安を解消して腰痛に立ち向かう
腰痛はつらい体験です。しかし、その痛みをどう解釈するかで道は大きく変わります。悲観的に考えてしまうと痛みの悪循環にはまりやすくなります。不安をなくし、希望を持つことができれば、回復への道が開けます。
そのキッカケとして医療を利用するのもいいでしょう。ただ、全ての医師が腰痛に精通しているわけではありませんので、次善の策として、自分で正しい腰痛の知識を仕入れておくことは大きな意味があります。
「腰痛は心配いらない、体を動かそう」と大々的にキャンペーンを行って、腰痛を減らしたオーストラリアという国があります。正しい情報はそれだけで腰痛を改善する可能性を持っています。
Population based intervention to change back pain beliefs and disability: three part evaluation.
難しいのは、インターネットだと、専門的な用語で検索しないと有益な記事にたどり着けないことが多いという部分です。間違った情報を元に腰痛対策をしても、良い成果を得るのは難しいでしょう。困ったことに、インターネットには間違った情報がまだまだ溢れています。
ひとついえるのは、不安を煽る記事には注意が必要ということです。不安は痛みの悪循環の入り口でもあるからです。難しければ、「腰痛は心配いらない、体を動かそう」とだけ覚えておくといいでしょう。
以上、参考になりましたら幸いです。
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