東洋医学には聞きなれない言葉が沢山出てきます。感覚的に納得いくものもありますが、「本当か?」と疑いたくなるものもあります。そのため、鍼灸師の中にもアレルギーを起こして離れてしまう人が多いです。

しかし、もう少し勉強してみると、現代医学とそう違わない部分も少なくないことに気付きます。
例えば、東洋医学における腎についてです。腎は現代医学でいう腎臓に副腎や生殖機能も含めた概念です。ちょっと専門的な話になりますが…。

腎は水を固める作用がある

腎は水の臓で、水を固める作用によって貯水タンクのような働きをすると言われます。こう書くと分かりにくいですが、これを水を引き寄せる力と言い換えると浸透圧のことだと分かります。腎臓は余分な水分を尿にすることで浸透圧の調整に関わっています。

腎は納気作用によって、呼吸をつかさどる

呼吸というのは、通常は酸素と二酸化炭素のガス交換のことですが、これは人体の酸塩基平衡においてとても重要です。酸塩基平衡というのは、体内でpHが一定に保たれていることをいいます。腎臓も電解質の調節によって酸塩基平衡に深く関わっています。

腎は恐をつかさどる

恐というのは感情(七情)の一つで、恐怖やプレッシャーのことです。人体は、こうしたストレスがかかるとこれに対抗しようとします。このとき腎臓の上についている副腎から分泌されるホルモンが重要な働きをします。
例えば、強い恐怖を感じると危険から逃れるため、人体は副腎からアドレナリンを大量に分泌して興奮状態を作ります。また長期的なストレスに対しては糖質コルチコイド(コルチゾール)を分泌します。

昔、「腎を消耗したら固める作用が低下して、お腹が出てくる」と習って意味が分かりませんでしたが、コルチゾールには内臓脂肪を増やす作用があることを考えると理解できました。また、コルチゾールはテストステロン(男性ホルモン)と互いに抑制しあう、シーソーのような関係にありますから、生殖機能も腎に含めた東洋医学は合理的にできているなぁ、と感心してしまうのです。

…今回はいつになく専門的になってしまいました。次はもう少し読みやすいのを書きたいと思います。