今日はリテラシーの話です。
リテラシーというのは、情報を正しく取捨選択する力のことだとお考えください。

昨今では、テレビはもちろんのこと、雑誌やインターネットなどでも、医療情報で溢れています。
しかし、それら全てが正しい情報かというと、全くそうではありません。

もちろん中には正しい情報もありますが、間違った情報も大量に存在します。
専門家と呼ばれる人が、正しい情報だけを出してくれればいいのですが、なかなかそうはいかないのが現実です。
ある情報は、間違っていたり、偏っていたり、古かったりするものです。
そうした中で、正しい情報を選んでいく力が、医療者ではない一般の方々にも必要とされるのが今の時代です。

「ヘルスリテラシーの高い人は、そうでない人に比べて長生きする」という研究があります。
健康情報を正しく取捨選択できないと、健康を損なうリスクが増えると言っていいでしょう。

情報の真偽を見分けるのはむずかしいかもしれませんが、新しい情報を見たらすぐ信じるのではなく、「本当かな?」と疑うことが第一歩になると思います。

間違った健康情報の例を一つ挙げてみます。

「うつ病は脳内物質セロトニンが減るから、セロトニンの材料であるトリプトファンをたくさん摂取して予防しましょう」
これは医療情報としてけっこう目にするのですが、間違っています。

トリプトファンがセロトニンの材料なのは正しいですが、普通の食生活をしていてトリプトファンが不足することはありえません。
もしセロトニンが減ったら、それは材料が足りないのではなく、何か別の理由で生産量が減ったのです。
たくさん食べて材料を増やしても、作られるセロトニンは増えません。

うつ病の治療では、SSRIという薬が使われます。
日本語だと、セロトニン再取り込み阻害薬になります。
作る量を増やすのではなく、放出されたセロトニンが回収されるのを邪魔して量を増やす薬です。

医師がその手段を選ぶか?というのは、情報を取捨選択するときの一つの基準になりますね。
参考になりましたら幸いです。