鍼灸治療には沢山の流派があります。経絡治療、中医学、沢田流、長野式、積聚治療、現代医学的鍼灸、等々。しかし、大雑把にいえば東洋医学的鍼灸と現代医学的鍼灸に分けることができます。

私の治療は東洋医学的鍼灸です。もともと出身校で東洋系の鍼灸が盛んだったことも大きいのですが、それ以上に治療効果の面でアドバンテージがあると思っています。

例えば、肩こりで肩の僧帽筋が硬くなっていたとします。現代医学的鍼灸ならば、僧帽筋に鍼をして緊張を緩めます。また拮抗筋などを見て全身のバランスを整えることも考えられますが、基本的にシンプルです。

では、東洋医学的鍼灸だとどうなるでしょうか。

私の場合は脈診から入ります。脈を診ると、お腹をこわしやすいとか、ストレスが溜まっているとか、睡眠時間が足りないとか、色々なことが分かります。例えばストレスから神経が緊張して肩こりになっているなら、まず交感神経の緊張を緩める必要があります。その上で僧帽筋を緩めれば、効果はさらに上がるでしょう。

ここで、自律神経のアンバランスを放置したまま肩だけ緩めたとすると、治療して楽になってもすぐ元に戻ることが考えられます。これだとなかなか現状から脱出できません。東洋医学的な治療では、肩こりを原因ごとに細かく分けて考えることで、元に戻りにくい治療が出来るようになります。

ただ、東洋医学系の鍼灸にも弱点があります。言葉が分かりにくいのです。先程の例ですと、「肝の蔵する血中の津液が虚したことで虚熱が発生して胆経に波及したので、肝の陰分(血中の津液)を補ってから胆経を瀉法する」という説明になってしまいます。これだと一般の方にはまず理解不能です。ストレスと肝臓も結びつかないでしょう。そこで鍼灸師には、東洋医学の言葉を現代の言葉に翻訳する力が必要になります。(私もまだ勉強中ですが)

しかし言葉の壁さえクリアすれば、東洋医学的鍼灸にはスゴイ可能性があります。その可能性を信じて、毎日の治療に取り組んでいます。