セルフケアは大切ですが・・・
セルフケアという考え方があります。
これ自体は何ら否定するものではなく、むしろ健康の維持増進のためには欠かせないものでしょう。
私自身、患者さんにはセルフケアとして、ストレッチなどを指導したりもしています。
セルフケアにも色々とあって、鍼灸院ですと、患者さんに自宅でお灸をしてもらうという場合も多いようです。
研修会に行ったら講師の先生が、自宅でこうお灸してもらうんだと解説されたりもします。
しかし私の場合、患者さんに自宅灸を指導することは稀です。
ほぼないといっていいでしょう。
今日はその理由について書いてみようと思います。
ツボは生きている
これは鍼灸師によってもかなり意見が分かれる所だと思いますが、ツボの効能というのは常に存在するのか、という問題です。
私は、ツボの効果はその時によって変化するのが当然という考え方をしています。
例えば、私が腰痛に対してよく使う尺沢(しゃくたく)というツボがあります。
前かがみになったときに腰の左右どちらかが痛むとき、その反対の尺沢に深めに鍼をすると、即効性がある場合があります。
では、1回の施術で改善はしたが治りきらなかった場合に、自宅で尺沢にお灸をしてもらうのはどうでしょう。
私はこれをいいことだとは考えていません。
ツボは日々変化する
先ほど、「前かがみになったときに腰の左右どちらかが痛むとき」と書きました。
しかし、その条件のときに100%間違いなく尺沢が効くかというと、そんなことはありません。
ある程度まで尺沢で改善したけれど、そこから先は別のツボにしないと改善しないケースも多々あります。
別のツボに変えるべきなのに同じツボを使い続けることは、ムダな刺激になるばかりか、マイナスの効果を生むリスクも出てきます。
ツボを刺激するときには、今このタイミングにこのツボに刺激してよいのか、間違いはないのか確認した上で行ない、その後狙い通りの変化があったかチェックする必要があります。
特に、このタイミングというのが曲者でして、同じ患者さんでも時間によって日によって変化します。
当院にお越しいただいている患者さんならよくご存知だと思いますが、使うツボは日によって変化します。
人は生きているので、朝と夜、今日と明日で同じ状態ということはありません。
結果的に同じツボが選ばれることはありますが、変わることも多々あります。
指導が専門的になりすぎる可能性
リスクなく効果的に患者さんに自宅灸をしてもらおうとすると、ツボの判定方法まで指導する必要が出てきてしまいます。
確実性のある施術をしてもらうために、鍼灸師と同じ勉強をしていただく必要が出てしまう、といったら大げさでしょうか。
実際、こちらが説明した加減を通り越して、良かれと自己判断で過剰な刺激をしてしまわれた経験もあります。
それなら最初から本業のこちらにお任せいただいた方がずっといい。
これが私の判断になります。
鍼灸で効果を出すというのは、簡単なことではありません。
リラックス効果を求めるなら自宅灸もアリだと思いますが、当院にいらっしゃっている方々は治療効果を望まれています。
その期待にお応えするには、私の方でしっかり施術させていただくのが一番だと考えています。