体全体のバランスを見渡したとき、全身が均一にこっている人はいません。全身がもし均一にこっているなら、そのこりは自覚されないのが普通です。体のこりを感じているならば、バランスが均一ではないということです。

こっている場所、それを東洋医学では実(じつ)と呼んでいます。エネルギーが集まっている場所というニュアンスです。

どこかにエネルギーが集中していると、別のどこかにエネルギーが足りない場所が出来ます。それを虚(きょ)といいます。虚実はプラスとマイナスの関係ですね。

実だけの治療では不十分

もう少し具体的な話をしましょう。肩こりがきついとしますと、こっている部分を実と見なします。次に、こっていない他の場所を丹念にさがすと、ゆるんでいる部分を見つけることができます。これを虚とします。

実になっている肩だけ緩めると一時的には改善しますが、元に戻りやすいという問題があります。虚の部分を放置しているので、体全体のバランスは取れていないからです。

そこで、先に虚のゆるんだ部分を刺激して引き締めます。その上で、実の肩こりをほぐすと、全体のバランスが整います。バランスが取れていると、元に戻りにくくなります。

東洋医学の陰陽論は、このような発想をします。当院で、肩コースや腰コースといった部分に分けた治療をしない理由がこれです。全身を整えることが東洋医学の基本原理なのです。