手術の痕

最近、久しぶりにお見えになった患者さん。前は腰痛でいらしていたのですが、このところ調子がいいということで数年の間が空いての再来院。(腰痛が再発していないのは嬉しいことです)

どうしたのかと思ったら、手術をされたそうです。ガンが見つかり、リンパ節に転移もあったそうです。手術は無事に終わり、その後の経過も良いらしいのですが、手術創の周囲にむくみやこわばりが出てつらいとのこと。当院で手術創のケアをはじめました。

何をするのかというと、手術の傷の周りに浅い鍼をするわけです。鍼には誘導作用というものがあって、血流を動かすことができますから、むくみの解消をうながすことができます。

また、手術創の周辺はなるべく動かさないよう生活するのが普通ですから、筋肉のこわばりが出やすくなります。そうした不快感を鍼で取り除いていくわけです。

患者さんいわく「最初に治療を受けた夜は傷の周りがビリビリしていたが、翌日にはなくなり、むくみもとれて調子がいい」とのこと。鍼灸によって血流が増えたことによってしびれが出たのでしょう。しびれは血流が減ったときではなく、戻ったときに起こるものです。

ところで、手術をすると東洋医学的には瘀血(おけつ)がしばしば問題になります。瘀血とは、血流の滞りによってできる代謝産物、いわゆる悪い血という概念です。瘀血の診察は、おへその左下を押圧すると強い痛みが出ることから判断します。もしくは、舌の裏側の静脈を見ます。

後々に悪影響がある場合がありますので、瘀血の処置をしつつ、手術創のケアをしていきます。3日おきくらいで計3回治療して、経過が良いので週1回に間隔を開けました。

いつもは筋肉の痛みや自律神経の治療をすることが多い当院ですが、ちょっと変わった症例ということでご紹介しました。