今日はどちらかといえば、鍼灸学校の学生向けの記事になります。

我々鍼灸師は、国家試験を受ける前に3年間学校で勉強しないといけません。いわゆる鍼灸学校です。

鍼灸学校では、当然ながら東洋医学の授業があり、教科書の最初に気の説明が出てきます。気は全ての現象を引き起こす。気は集まり物質となる。多くの学生がこの意味が分からず、東洋医学が苦手になってしまいます。あまりに抽象的で、非現実的だからでしょう。中には、「そんなものを信じるなんて宗教か?」という感想も出てきます。宗教ではなく、哲学なのですが(苦笑)

気とは概念です。ただ、現代人にとって当たり前の概念ではないので、すぐに話を飲み込むことが出来ないのです。

小学生のとき、算数の授業でタイルを使って足し算引き算を習った経験があると思います。タイルを使うと、数という概念が現実に即したイメージで理解しやすくなります。あのような手順を踏まずに、いきなり数字の式だけ見せても、何のことだかピンとこないでしょう。

気も概念ですから、本当はそこに時間をかけて、ちゃんと腑に落ちてから次にいけばよいのです。ただ、そこまでゆっくり授業している時間がないので、どんどん進んでしまって、分からない学生が増えてしまう。すると、気を前提とした東洋医学も分かりませんから、東洋医学を使えない鍼灸師がたくさん出てきてしまうわけです。

しかし、鍼灸を扱うとき、東洋医学理論なしでは絶対によい治療は行なえません。効果のある鍼灸を行うためには、気の概念や東洋医学理論は必要不可欠なものです。東洋医学理論は効果的な治療法を計算するためにあります。東洋医学理論なしで治療することは、公式を使わずに円の面積を求めるのに似ています。

実際、当院で治療を受けた患者さんから「他所でも鍼灸は受けていたが、こんなに効いたのは初めてだ」と言われることがあります。気の理論を使っているか、使っていないか。少しの差ですが、はっきり違いが出てしまうようです。