「この肩はどうして痛むんですか?」

今日、患者さんに聞かれた質問です。この答え方は、いくつもあります。

現代医学的に話すならば、筋肉の拘縮・硬結ができていて、その部分は血流がわるく酸欠が起きていて、その状態に痛みの受容器が反応して痛みを感じるんです」という言い方があるかもしれません。

または、もっと単純にしてしまって、「筋肉が硬いからです」「血流が悪いからです」「酸欠のせいです」ということもできるでしょう。原因に逆上って「ストレスの蓄積です」もしくは、疫学的な視点から「筋骨格系疼痛の8割は原因不明です」という答え方もあります。

細かい議論の余地はあるにせよ、どれも間違いではありません。

東洋医学的に答えるなら、どうなるでしょう。「気の滞りがあるからです」というのがよくある言い方で、もう少しホワっとさせて「バランスが悪いからです」という言い方もあるでしょう。専門用語を持ち出すのであれば、経絡治療的に「肝の精気が虚したことで虚熱が発生して、その熱が肩に流注する経絡に停滞した結果、痛みが出ています」という答え方も可能です。通じざれば即ち痛む、です。

すぐに思いつく答え方をざっと書いてみたのですが、実は現代医学パターンも東洋医学パターンも、表現が違うだけで全く同じことを言っています。同じ現象を違う解釈で説明しているにすぎません。

そして、おそらくは患者さんが求める答えは、どれも違う。患者さんの質問は単なる疑問ではなく、自分の体なのに思うようにならない、もどかしさや苛立ちといった感情から出たものではないかと思うからです。もちろん質問にはしっかり答えないといけませんが、それ以上に私がすべきは、しっかり症状を楽にして、良くなったと実感していただくことでしょう。

答えるよりも、応えることが求められていると思うのです。