私は京都の仏眼鍼灸理療学校で学びました。仏眼鍼灸は90年もの歴史がある伝統校で、経絡治療が盛んな学校でもあります。そんな自分にとって、経絡治療を学ぶことはとても自然なことでした。

しかし、卒業後しばらくして、ひとつの壁に当たります。スムーズに治る患者さんも多いのですが、どうも効果が出せない患者さんも無視できない割合で存在しました。似たような症状なのに、この患者さんは治って、こちらは治らない。しかし、何が足りなくて上手くいかないのか分からない。

答えを求めて勉強する中で、今まで敬遠していた古典を読むしかないという結論に至りました。経絡治療のオリジナルを勉強するということです。

経絡治療の土台となった難経(なんぎょう)は、鍼灸の黄帝内経(こうていだいけい)と並ぶ、古典鍼灸医学書の金字塔です。経絡治療の根拠になっている書物でもあります。断片的には色々な文献で触れていましたが、しっかり腰をすえて取り組んだことはありませんでした。

いざ読み込んでみて分かったことは、難経はストレスの種類と対処法について書いた本だったということです。難経は紀元前に書かれた本でありながら、ストレスが病の原因であると指摘しています。驚くほかありません。

自分に足りていなかったのは、ストレスの対処法だったのです。もちろん経絡治療も難経をベースとしている以上、ストレスの対処は可能です。しかし、難経と比べると緻密さに差がありました。

難経に取り組んだことは、私にとって大きな転機となりました。