今日は肩こりの話です。
肩こりというのは、肩の筋肉が硬くなって不快感を生じたもの、と考えることができます。つまり、硬くなった肩の筋肉をほぐして柔らかくすれば治るはずです。ところが、実際に治療すると、不思議なことが起こります。
右肩のこりを訴えた患者さんを治療するとします。右肩に筋肉のこりがありますから、そこに鍼治療を行って柔らかくほぐします。しかし、それだけで治療を終えると、十中八九「右は楽になったけど、今度は左肩のこりが気になる」と言われることになります。
そこで、今度は左側を治療します。すると「次は背中のこりが気になる」と、新しい症状が出てきてしまいます。
モグラたたきのように、次から次へとこりが出てきて、治療しても治療してもなかなか終わりません。そうこうしていると、一周して右肩にこりが戻ってきたりもします。
なぜかというと、肩こりというのは、体で一番筋肉がこっているところに感じるものだからです。どこか一ヶ所、こりを感じているところだけ治療しても、次にこっている所に意識が移るだけで解決しないものです。
肩こりの治療に必要なのは、こりをほぐすというよりは、全身の緊張を均一にすることなのです。バランスを取るということです。全身のバランスがとれていれば、どこも意識されないので、治ったと感じることができます。
そのため、肩こりだからといって、肩だけ治療するというのは、ありえないことになります。