昨日は、(公社)京都府鍼灸師会主催、第50回東洋鍼灸医学大講演会でした。スタッフ仕事の都合で、朝9時半から夜7時頃まで会場のルビノ京都堀川にいました。
イベントの第一部は、落語家の桂福車さんによる強情灸という落語でした。熱いけれどよく効くと評判のやいと屋(お灸屋)ができた。そこでお灸32粒を一度にすえてもらったという話しを聞いて、いや俺の方が我慢強いと大きなお灸をすえて対抗する話です。
これも面白かったのですが、もう一本。左甚五郎という彫刻職人が登場する落語もありまして、こちらに非常に関心させされるところがありました。ネットで調べたら「ねずみ」という落語のようです。
落語「ねずみ」に見るノーシーボ効果
とある宿屋の主人が腰を抜かしてしまい、足腰が立たなくなってしまいました。医者からは、もう治らないと告げられて、書き物の仕事くらいしかできない状況になります。ところが、ある出来事に怒りがこみ上げたとたん、立ち上がるのです。
実はいつの間にか治っていたのですが、治らないと思い込んでいたために立てなかったのですね。アルプスの少女ハイジの中でも、有名な「立った、立った、クララが立った」という場面がありますけれども、本当は問題なくても、思い込みによって病気になってしまうことがあります。
これなどは、典型的なノーシーボ効果(ノセボ効果)ということができるでしょう。ノーシーボ効果とは、悪いと思い込むことで本当に具合が悪くなってしまう現象をいいます。
現実の世界でも、医師からレントゲンの異常を指摘されたことがきっかけで具合が悪くなってしまうケースがあります。それまで大したことなかったのに、急に痛みをこじらせてしまうのです。不安やストレスが強くなると、交感神経の過緊張を起こし、血行不良や筋緊張から痛みが悪化すると考えられています。病名がつくことは今後の方針を決める助けになるはずなのですが、深刻に捉えすぎるとよくない場合があります。
間違った思い込みを解除すると治りだす
ところで、この宿屋の主人のような治り方をする例というのはあります。間違った思い込みが何かのきっかけで解除されると、途端に治りだすということがあります。
私も経験があります。とある女性が背中が痛いと言っていたので、「なにか考え事ばかりしていませんか?」と聞いてみたところ、「そうえば」と思い当たったようで、その直後に痛みが消えてしまいました。
背中に何か問題があって痛かったのではなく、思考によって痛みが出てしまっていたわけです。何もしていないのに体が痛くなることは誰にでもあることです。そこで、まぁそのうち治るだろうと気楽に流していればすぐ治ることがほとんどです。しかし、痛いのは姿勢のせいかなー、負担かけたせいかなーなどと考えているうちに、自分で問題を大きくしてしまうことがあります。
思考は体に影響を与えます。そもそも考えているのは脳ですから、脳が体に影響するのは当然の話です。
なかなか自分で間違った思い込みに気づくのは難しいとは思いますが、方法がないわけでもありません。例えば読書です。医療のことを勉強する読書療法は実際に治療効果が確認されていて、ガイドラインにも出てきます。医療者といろいろ話してみるのもいいと思います。何かいい気づきが得られるかもしれません。
それにしても、言葉というのは本当に奥が深いですね。