鍼灸医学には、是動病(ぜどうびょう)という病の分類があります。

是動病とは、一つの状態のままではない、症状が変化していく病です。とらえどころがなく、はっきりと病変を示すことができません。

今の言葉で言えば、自律神経失調症が当てはまります。だるかったり、こっていたり、冷えていたり。いつも何かしら調子がすぐれないものの、調子に波があって、常に同じ状態が続くというわけでもありません。

病院に行けば様々な検査を受けますが、異常がみつからず、ひどい時は「気のせいです」と言われてしまったりもします。何かしらお薬は出されるのですが、飲んでも効いたかよく分からない。つい先日もそういった相談がありました。

一見とらえどころのない自律神経失調症ですが、それは診ているポイントが違うからです。画像や数字では分からなくても、触れてみると分かることがあります。

例えば、自律神経が過度に緊張していると、例えば手首の脈の感触が硬くなります。背骨の両脇にある筋肉がこり固まってきます。右肩のこりが強くなり、左の肩甲骨の動きが悪くなります。足の冷えが強くなることもあります。こうした変化は、レントゲンにも血液検査にも反映されません。

鍼灸は、とらえどころのない症状をとらえるために、手の感覚を総動員します。