私が二十歳前後の頃。精神医学の本をたくさん読んでいました。自分の様々な葛藤を解決するために、知識を求めていたのでしょう。何冊読んだかはもう分かりませんが、おかげでかなり詳細に自己分析できるようになりました。

心の問題を考えるとき重要になるのが、抑圧と投影です。自分で認めたくないマイナス感情にフタをするのが抑圧。抑圧によって物事をゆがめて見てしまうのが投影です。抑圧と投影が強い状態を神経症と呼んだりします。自己分析の結果、いくつもの抑圧に気がついて、そのたびに解放されていきました。

その後、紆余曲折あって鍼灸師になるわけですが、その勉強の中で心の問題が出てきました。東洋医学において、体の問題とは、心の問題と密接な関係がありました。体の問題に対処することが、心の問題を軽減する手助けになるということに少なからず驚いたものです。鍼灸学校の同級生には、神経症が鍼灸で治ったという人もいました。

心と体は一つのもの、つまり心身一如というわけですが、これは東洋医学の専売特許でもありませんでした。腰痛を勉強していたら、腰痛患者の特徴的な心理傾向を指摘している本がありました。かのサーノ博士の本です。読んですぐ神経症のことだと理解しました。抑圧と投影は、心理面の影響にとどまらず、身体症状としても現れる。まさに心身一如です。

心の問題で悩んでいた自分が、気づけば心の問題とたたかう立場になっていました。本当に、不思議なものです。