もし具合が悪いのに病院で原因不明と言われたら…、おそらく不安に思われる方が多いのではないでしょうか。しかし、医療の世界にいる側からみると、原因不明というのは目にする機会のとても多い言葉です。

例えば腰痛です。腰痛はなぜ起こるのでしょうか、と聞かれても、実は明確な答えは存在しません。

  • 負担をかけすぎた
  • 姿勢が悪いから
  • 骨盤がゆがんでいるから
  • 骨に変形などの異常があるから
  • 血行が悪いから

などはインターネットで調べればすぐに出てきますが、これらはどれも厳密には「仮説」の段階です。ですから腰痛の原因は、正確にはまだ不明なのです。

でも、原因が分からないから治療が出来ないなんてことはありません。それが鍼灸(東洋医学)の強みの一つです。鍼灸の世界で言われることですが、家が火事だとしたら、出火原因が分からなくても火を消すことは出来る、ということです。原因は火を消してから、ゆっくり考えればいいのです。(消えてからでないと検証できないという側面もあります)

実は、東洋医学では病気の根本は「生命力の低下」だと考えられています。病気の原因というのは、ストレスにせよ肉体的な負担にせよ、日常の中に無数に転がっていますが、体が元気ならこれらに左右されずに健康に過ごせます。しかし体力が落ちると、様々な影響を受けて調子を崩してしまいます。こうした時に病因を取り除くのも大切ですが、それと合わせて体を元気に戻すことで病因の影響を受けなくする。それが東洋医学の考え方であり、自然治癒力を高めるということの意味です。