先日、ある女性から肩こりの相談を受けました。
高校生の頃から10年くらい、ずっと肩こりなのだそうです。
原因に心当たりはないか尋ねると、「猫背だから」とのこと。

そうですよね。
普通はそう考えます。
TVでもインターネットでも、そういう情報でいっぱいです。※

でも、少し考えてみて下さい。
猫背だと、どうして肩こりになるのですか?
「肩や背中に負担がかかるから?」

では、負担がかかると肩こりになるのですか?
「そうだと思います。」

では、筋力トレーニングはどうでしょう。
ダンベル体操などをすると肩こりになりますか?
「肩こりにはならないけど、筋肉痛になります。」

そうです。そのとおりです。
でも、それで終わりじゃないですよね。
筋肉痛が治ったら、次に何か起こりませんか?
「分かりません・・・。」

筋トレの目的は何だったでしょうか?
「あ!」

はい。
筋トレをすると、筋肉痛になりますが、治ったあとは筋力がアップします。
次からは同じ負荷をかけても筋肉痛にはならなくなります。
これが筋トレの目的です。
負担をかければかけただけ、筋力は強くなり、体は頑丈になります。

猫背は背中が丸まっているために、首や背中に負担がかかる。
肩が前に出るので、肩の前の筋肉は縮んでくる。
肩の後ろ側は引っ張られて負担がかかる。
これは事実です。
しかし、その姿勢に必要な筋力はもうそなわっていますので、何も問題はありません。
私はよく初診のときにこういう話をします。

猫背の人は、きっとこれまでに姿勢を正そうとしたことがあるでしょう。
でも続かなかったと思います。
それは、姿勢を正していると逆に調子が悪くなったからではないでしょうか。
猫背が原因なら、背筋を伸ばせば肩こりは改善しないとおかしいですが、実際は必ずしもそうではありません。
私はこれまで、姿勢はきれいなのに肩こりの方を何人も診ていますので、よく分かります。

大切なのは、美しい姿勢・正しい姿勢ではなく、楽な姿勢をとることです。
例えば、長時間座っていて肩こりが出るのなら、体勢を変えて楽な姿勢を探してみましょう。
寝ているときに寝返りをうつように、楽な姿勢を探してコロコロ体勢を変えていくのです。
美しい姿勢・正しい姿勢は魅力的ですが、もっと楽に力を抜いていくと、姿勢というものが柔軟な動きの中にあることに気づけると思います。
その柔らかさが分かれば、肩も今よりずっと楽になっていることでしょう。

※情報はたくさんありますが、肩こりは増え続けています。つまり、本当に有益な情報は伝わっていないと考えられます。