首の痛み:ドイツ診療ガイドラインのポイント

頸部痛診療ガイドラインの要点

臨床診療ガイドライン:非特異的頸部痛
臨床診療ガイドライン:非特異的頸部痛
Clinical Practice Guideline: Nonspecific Neck Pain

今回は、首の痛みについて、ドイツの診療ガイドライン(2025)を見ながら要点を確認していきます。

ほとんどの場合、首の痛みの原因は不明です。特定の治療やさらなる診断検査を必要とする原因を特定できない場合、非特異的頸部痛と呼ばれます。1%未満の症例では、首の痛みは潜在的に危険な基礎疾患(例:悪性腫瘍、感染症、出血、血管損傷)によって引き起こされます。

基本的に、首の痛みの原因は不明です。これは、首の異常が見つけられないのではなく、見つけられる多くの異常が痛みとの関連性が低い、という意味です。それらを非特異的頸部痛といいます。

危険な頸部痛もありますが、1%未満しかありません。多くの首の痛みは、安全です。

構造的原因の証拠(例:運動障害、夜間痛、誘発外傷)がない急性頸部痛(0~3週間)の場合、一般的に画像診断は行うべきではない。

構造的という表現は専門的な言い回しですが、物理的な・形態的な・見て判別できる異常という意味合いだとお考えください。具体的には、骨折・炎症・神経根症・神経障害・腫瘍などの可能性を示す兆候がなければ、早期のレントゲンやMRIは必要ありません。

ストレートネックは一般によく話題にされますが、ガイドラインには全く出てきません。

自己管理に重点を置いた治療的措置は、高い効果量(up to d >1.0)を示しています。このような措置の成功は、患者教育に依存する可能性があります(中程度の効果量、d = 0.73)。

ここでは、「up to d >1.0」と「d=0.73」に注目してください。このdという値は、コーエンのd(Cohen's d)と呼ばれるもので、効果の大きさを示す指標です。効果(小)=0.2、効果(中)=0.5、効果(大)=0.8というのが基準です。
そこから考えると、自己管理はコーエンのdが1.0を超える効果量=ものすごい効果で、自己管理を患者さんに教えることはdが0.78=はっきり差が分かる効果、という意味です。

セルフマネージメントが大切です。そのためには、患者さんにしっかり情報をお伝えする必要があります。

慢性頸部痛(12週間以上)の場合、運動療法も推奨されます。鎮痛薬は短期的な緩和をもたらす可能性があります(効果量は低い)。

痛みが長引く場合、脳の鎮痛作用が低下している可能性が指摘されています。その対処法の一つが運動です。運動の刺激を受けると、脳は活性化して鎮痛作用を徐々に取り戻していきます。

鎮痛薬は効く場合がありますが、治療の主役とは考えられていません。

病歴や身体診察で構造的な原因が特定できない頸部痛の患者には、活動性の維持が中心要素として推奨される。

活動性の維持を重視するのが、このガイドラインの特徴です。

痛みを怖がって動かなくなると、脳は痛みをより大きな問題として処理するようになり、結果として痛みを感じやすくなります。活動性を維持することは、その対策になることが知られています。

新たに頸部痛を発症した患者の問診と身体診察で、診察中に構造的原因の証拠が見つからない場合は、この段階でそれ以上の診断措置を講じるべきではありません(専門家のコンセンサス[EC])。潜在的な構造的原因には以下が含まれます。

骨折(外傷性、腫瘍関連、骨粗鬆症性)
炎症(感染症、自己免疫疾患)
神経根症/神経障害
腫瘍/転移。

こうした異常がひそんでいる可能性がない場合、それ以上調べる必要はありません。調べても無駄に終わる可能性が高いからです。

ポイントは、調べても異常が見つからないのではなく、見つけた異常が痛みと関係あるか分からない、ということです。そんな異常をいくつ見つけ出しても意味はありません。

これらの要因は慢性化のリスクを著しく高める可能性があるため、問診時にこれらの要因に関する情報を入手する必要がある。

うつ病/ストレス
首の痛みに関する主観的な概念、および
仕事の種類、仕事への満足度、そしておそらくは失業への不安など、職場に関連する要因。

心理社会的要因は頸部痛でも重要です。痛みが体だけの問題ではなくなって、少なくとも40年は経っています。この流れは変わらないでしょう。

痛みを重大な脅威だと思いこんでいると、そこから受けるストレスは膨れ上がります。ストレスは痛みを増幅することが知られています。

仕事は人生において比重が大きく、様々なストレスの元にもなりえます。

情報をアプデートしよう

ここまで、ドイツの頸部痛診療ガイドラインを確認しました。痛みは、ケガや病気で説明できないことも多く、形の異常や物理的な負荷で考えるのも限界があります。

しかし、有効な対策はありますし、普通に一般に公開されています。今なら、ブラウザ(Chromeなど)の翻訳機能を使えば、誰でも読むことができます。こうした情報を知っている人と、知らない人の間にはどうしても差が生まれます。

ぜひ、情報をアップデートして、日々の生活にご活用ください。

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著者:浦﨑 靖博(うらさき やすひろ)
鍼灸師。2007年に向日市で開業して以来、鍼灸一筋。当サイトは全て、浦﨑の自作自筆。ブログでは、主に現代医学の情報を解説している。