ストレートネックは心配いらない?

はじめに

首が痛い、というご相談はよくあります。「その痛みの原因に、心当たりはありますか?」とお尋ねすると、しばしば返ってくるのがストレートネックという言葉です。

ストレートネックはいろんな所で話題になりますし、気になる方も多いでしょう。もしかしたら、病院で検査してストレートネックを指摘されることもあるかもしれません。

しかし、正直なところ、そこまで気にしなくて大丈夫ですよ、というのが私の答えになります。なぜなら、ストレートネックと痛みは「関連性がほぼない、もしくは関連性が弱い」からです。

解説していきます。

ストレートネックとは?

一般的に、頚椎(首の骨)のカーブは前弯といって、前側に出っ張った状態が正常だといわれます。これが真っすぐになっているのがストレートネックです。ストレートネックでは、頭の重さがまっすぐかかるために首の負荷が増えて、痛みの原因になると説明されます。

ただし、ストレートネック自体は骨の状態を指す言葉で、医学的な診断名ではありません。

ストレートネックと正常な頚椎前弯の図

無症状の人にもストレートネックはある

まずはこちらの論文です。
Cervical lordosis in asymptomatic individuals: a meta-analysis
頚椎のカーブについての論文を複数のデータベースから検索し、基準に合う論文21件を調べたところ、無症状者の約64%が頚椎前弯でした。つまり、残りの36%はストレートネック、もしくは頚椎後弯だったのです。ストレートネックで痛みが出るなら、なぜこの人たちは痛くないのでしょうか?不思議です。

さらに、頚椎の反り具合については、症状が出ている人とそうでない人の間で、統計的な差はありませんでした。こうなると、ストレートネックは、そもそも異常所見なのか?という疑問が出てきます。

ストレートネックだから痛いとはいえない

次に、こちらの論文です。
Does the sagittal alignment of the cervical spine have an impact on disk degeneration? Minimum 10-year follow-up of asymptomatic volunteers

首のカーブが椎間板に影響するか調べた研究ですが、同時に、首のカーブを分類して症状の発症と関係があるかも調べています。

「一方、初回MRI撮影時の頸椎矢状面アライメントとその後10年間の臨床症状の発現との間には有意な相関は認められなかった。臨床症状の発現はむしろ年齢と性別に密接な相関があった。」

結果は、関係ありませんでした。ストレートネックだから痛いということもないし、時間が経ってから痛くなるということもなかったのです。

次の文献です。
Does cervical lordosis change after spinal manipulation for non-specific neck pain? A prospective cohort study

首の痛みが続く患者29名と、何も症状がないボランティア30名を集めて調べたところ、首のカーブと症状には関係がありませんでした。

さらに、頚椎マニュピレーション(徒手療法)を行った患者を再度調べたところ、首のカーブに変化はありませんでした。

本研究では、軽度の非特異的頸部痛患者と健康な被験者の間で頸椎前弯(矢状面アライメント)に差は認められなかった。さらに、頸椎マニピュレーションを4週間受けた患者において、頸椎前弯に有意な変化は認められなかった。

オステオパシーやカイロプラティックなど、徒手で頚椎を矯正する施術はありますが、手だけで首のカーブを変えられるという研究はほぼありません。かなり意外です。

こうした論文を見る限り、少なくとも、「ストレートネック単独で痛みが出るわけではない」ということは間違いないでしょう。

ストレートネックは、首の痛みの原因といえるほどではありませんでした。要因(リスクファクター)である可能性はありますが、首のカーブだけに注目していても痛みの本質は見えてきません。

首が痛いのはなぜ?

ストレートネックが痛みの原因とはいえない。では、どうして首が痛くなるのでしょう?

こちらの文献が参考になります。
Neck pain: global epidemiology, trends and risk factors

首の痛みのリスクファクターは、ストレス、不安、うつ、破局的思考、睡眠障害、孤独(社会的支援の欠如)、酒、タバコ、仕事の影響、神経・筋骨格系障害、自己免疫疾患、遺伝などです。

体の問題もありますが、それが全てではありません。ストレス・環境要因から起こる痛みもあります。痛みとは、複合的に、いろんな要因が積み重なって起こると考えるのがスタンダードです。

昔は、痛みというものがよく分かっていなかったので、骨の構造や筋骨格バランスといった生体力学モデルで説明していました。しかし、それだけでは痛みを説明しきれなくなり、生物心理社会的疼痛モデルへとパラダイムシフトしています。

では、スマホ首は?

最近、ストレートネックに関係して、スマホ首というワードを目にします。スマートフォンを見るときの、視線を下げた姿勢が首によくないのではないか、というのです。

これを調べた論文が2025年に出ています。

Cervical flexion posture during smartphone use was not a risk factor for neck pain, but low sleep quality and insufficient levels of physical activity were. A longitudinal investigation

結論としては、スマートフォンを使うときの頚部屈曲姿勢は痛みの原因ではありませんでした。一方で、睡眠の質の低下と、運動不足は首の痛みに関連していました。かなり信頼性の高い論文です。

姿勢そのものが悪いわけではない、というのが現在のところ、優勢な考え方です。このあたりは、医学研究に一般の健康情報が追いついていない部分ですね。

また、スマホ首からストレートネックになる、という記事も見かけます。スマートフォンを見る姿勢は、はたから見ると首がまっすぐに見えるかもしれません。しかし、その姿勢では、上部頚椎(大後頭孔~第三頚椎)は動くが、頚椎の全体的なカーブに変化はない、という論文まで出ています(参考文献2)。

この状況で、「スマホを見る姿勢でストレートネックになる」と主張するためには、もっと長い時間をかけて姿勢に影響が出るかを調べた研究が必要ですが、現時点で因果関係にせまれるような研究は存在しないようです。

まとめ

というわけで、ストレートネックやスマホ首は、「そこまで心配いらない」という結論でした。もし首が痛い場合は、骨の心配をするよりは、他の要因を減らせないか考えたり、痛みそのものに対応する事をおすすめします。

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参考文献
Loss of cervical lordosis: What is the prognosis?

The effect of smartphone texting on cervical spine sagittal alignment in healthy young adults