ストレートネックは心配いらない?
はじめに
首が痛い、というご相談はよくあります。「その痛みの原因に、心当たりはありますか?」とお尋ねすると、しばしば返ってくるのがストレートネックという言葉です。
ストレートネックはいろんな所で話題になりますし、気になる方も多いでしょう。もしかしたら、病院で検査してストレートネックを指摘されることもあるかもしれません。
しかし、正直なところ、そこまで気にしなくて大丈夫ですよ、というのが私の答えになります。なぜなら、ストレートネックと痛みは「関連性がほぼない、もしくは関連性が弱い」からです。
解説していきます。
ストレートネックとは?
一般的に、頚椎(首の骨)のカーブは前弯といって、前側に出っ張った状態が正常だといわれます。これが真っすぐになっているのがストレートネックです。ストレートネックでは、頭の重さがまっすぐかかるために首の負荷が増えて、痛みの原因になると説明されます。
ただし、ストレートネック自体は骨の状態を指す言葉で、医学的な診断名ではありません。

無症状の人にもストレートネックはある
まず、ご紹介するのは、無症状の人の中に、どのくらいストレートネックの人がいるのか調べた研究です。もし、無症状の人たちの中に、ストレートネックが1人もいなければ、ストレートネックは痛みの原因といえるかもしれません。
さらに、同じテーマの研究を集めて質の高い論文を厳選し、結果を再分析することで、より信頼できる答えを出すことができます。そのため、1000本以上の論文をチェックして、質の高い21本を選び出し、解析を行いました。
その結果、無症状の人たちの中に、ストレートネックと、それよりも悪いと考えられている頚椎後弯が、36%も含まれていました。首が正常でなくても、痛くない人はたくさんいることが分かりました。
さらに、頚椎の反り具合については、症状が出ている人とそうでない人の間で、統計的な差はありませんでした。首がまっすぐなほど痛むわけでもなかったのです。
Cervical lordosis in asymptomatic individuals: a meta-analysis
ストレートネックだから痛いとはいえない
次にご紹介するのは、ストレートネックの人がその時は痛くなかったとしても、後になってから痛くなるかを調べた研究です。無症状のボランティアを集めてMRIで首のカーブなどを確認した後、10年間追跡調査しました。
結果は、関係ありませんでした。ストレートネックだから痛いということもないし、時間が経ってから痛くなるということもなかったのです。
こうした論文を見る限り、少なくとも、「ストレートネック単独で痛みが出るわけではない」ということは間違いないでしょう。
ストレートネックは、首の痛みの原因といえるほどではありませんでした。リスク要因である可能性はゼロではありませんが、首のカーブだけに注目していても痛みの本質は見えてきません。
首が痛いのはなぜ?
ストレートネックが痛みの原因とはいえない。では、どうして首が痛くなるのでしょう?
こちらの文献が参考になります。
Neck pain: global epidemiology, trends and risk factors
首の痛みのリスクファクターは、ストレス、不安、うつ、低い自己効力感、破局的思考、睡眠障害、孤独(社会的支援の欠如)、酒、タバコ、仕事の影響、神経・筋骨格系障害、自己免疫疾患、遺伝などです。
体の問題もありますが、それが全てではありません。ストレス・環境要因から起こる痛みもあります。痛みとは、複合的に、いろんな要因が積み重なって起こると考えるのがスタンダードです。
昔は、痛みというものがよく分かっていなかったので、骨の構造や筋骨格バランスといった生体力学モデルで説明していました。しかし、それだけでは痛みを説明しきれなくなり、生物心理社会的疼痛モデルへとパラダイムシフトしています。
では、スマホ首は?
最近、ストレートネックに関係して、スマホ首というワードを目にします。スマートフォンを見るときの、視線を下げた姿勢が首によくないのではないか、というのです。
これを調べた論文が2025年に出ています。
結論としては、スマートフォンを使うときの頚部屈曲姿勢は痛みの原因ではありませんでした。一方で、睡眠の質の低下と、運動不足は首の痛みに関連していました。かなり信頼性の高い論文です。
姿勢そのものが悪いわけではない、というのが現在のところ、優勢な考え方です。このあたりは、医学研究に一般の健康情報が追いついていない部分ですね。
また、スマホ首からストレートネックになる、という記事も見かけます。スマートフォンを見る姿勢は、はたから見ると首がまっすぐに見えるかもしれません。しかし、その姿勢では、上部頚椎(大後頭孔~第三頚椎)は動くが、頚椎の全体的なカーブに変化はない、という論文まで出ています(参考文献2)。
この状況で、「スマホを見る姿勢でストレートネックになる」と主張するためには、もっと長い時間をかけて姿勢に影響が出るかを調べた研究が必要ですが、現時点で因果関係にせまれるような研究は存在しないようです。
ストレートネックは手で矯正できない
ストレートネックの患者に対して、4週間の徒手療法を行い、首のカーブに変化があるかを厳密に調べた研究があります。結果は、何も変化がありませんでした。

Does cervical lordosis change after spinal manipulation for non-specific neck pain? A prospective cohort study
オステオパシーやカイロプラティックといった徒手療法は、首の痛みに効く場合があります。しかし、厳密に測定すると、首のカーブを変えているわけではなかったのです。では、なぜ痛みが減るのかというと、単にマッサージ効果が出ていただけで、最初からストレートネックは関係なかった可能性が考えられます。
余計な心配を減らすことが近道
ストレスは痛みを大きくする性質があります。正しい情報を知り、余計な心配を減らすことは痛みを改善する足がかりになります。
ストレートネックやスマホ首は、「そこまで心配いらない」という結論でした。もし首が痛い場合は、骨の心配をするよりは、他の要因を減らせないか考えたり、痛みそのものに対応する事をおすすめします。
この記事が参考になりましたら、SNS等でご紹介いただけますと幸いです。
参考文献
Loss of cervical lordosis: What is the prognosis?
The effect of smartphone texting on cervical spine sagittal alignment in healthy young adults



